同じ会社でも評価が逆転!この二冊から生き残る道を探る

本いろいろ

「大量生産」「大量消費」……昔はそれでよかったのですが、今はちがいます。

利用可能な化石燃料が減少していることだけが、私たちの直面している限界ではない。実際、それは最重要問題ですらない。石油がなくなる前に、地球がなくなってしまうのだから。

ディープエコノミー ビル・マッキベン著 英治出版 p30
ディープエコノミー 生命を育む経済へ [DIPシリーズ]
ディープエコノミー 生命を育む経済へ

「大量生産」「大量消費」 の象徴、世界最大級のスーパー「ウォルマート」。昔と今では評価がはっきり分かれています。

「 ロープライスエブリデイ」「 ディープエコノミー 」……生き残るために工夫をしなければいけない現代。その参考になることが、たくさん書いてありますよ。その一部をご紹介します。


ロープライスエブリデイ サム・ウォルトン著

ロープライスエブリデイ
ロープライスエブリデイ

海外ではおなじみ、ウォルマートを作ったサム・ウォルトンの一代記です。

彼が初めて自分のお店を作ったのは1945年。第二次世界大戦が終わった年でした。

今までの商売

当時の小売店は「婦人服店」「紳士服店」「子供屋」「靴屋」……細かく分かれていました。さらに「生産者」「卸問屋」→……→「小売り」と、手数料を何度も支払う必要がありました。今から考えれば割高ですが、当時はこれが普通だったんです。

ウォルマートはこう変えた

サム・ウォルトンは「これは効率が悪い」と考えました。そこで

  • お店にお金をかけない
  • 大量に仕入れる
  • 上乗せする利益を低くする
  • 社員が頑張って働ける制度を作る人件費が浮くから

とにかく「効率的に安く売る」企業戦略をとってみたのです。どんなことをしたのか、具体例を紹介しますね。


お店は、最初のうちは納屋のように汚くてもよい

外見より中身。安ければ客は来る、とサム・ウォルトンは考えました。

私たちの店は今にも倒れそうで、宣伝もけばけばしく、本当に醜悪で商品が見苦しく積み上げられていたのである。しかし、ライバルより20パーセントも安かった。人口6000人の町のお客さんが単純に価格だけのために納屋のような店に来て買っていくかどうかを知りたかったのである。答えは「イエス」だった。

ロープライス エブリデイ サム・ウォルトン著 同文書院インターナショナル(1992) p77

卸問屋、生産者と直接取引 大量に仕入れてまとめ売り

ひとつの店舗で洗剤を3500ケース(4万2千個)仕入れました。通常3ドル97セントのところ、1ドル99セントに値下げ。店内に積み上げて販売したときの話です。 

あの時はサムも店まできて『なぜこんなにたくさん買ったのだ。こんなに売れるはずはない!』と叱られたんです。でも、あれはあまりにも大規模だったのでニュースになり、みんなが見にきて一週間でなくなってしまいました。

ロープライス エブリデイ サム・ウォルトン著 同文書院インターナショナル(1992) p93~94

上乗せする利益を低く

(※今までのバラエティ・ストアは)あまりに長い間、昔ながらのバラエティ・ストアのコンセプトを持ち続けたのだ。45パーセントの利掛けに慣れてしまい、それを変えなかった。8ドルで販売してきたブラウスを30パーセントの利益しか上げない5ドルで販売することはできなかったのである。

ロープライス エブリデイ サム・ウォルトン著 同文書院インターナショナル(1992) p183

徹底的にお金をかけないで、安く大量に売る「薄利多売」を形にしたのがウォルマートだったのです。

すごい!社員が大喜びの制度

「利益再分配制」は1970年、制度が始まった当初は管理職のみでしたが、1971年、対象を全従業員にしました。

1971年、最初の重大な一歩が記された。かつての大きな過ちを訂正し、全アソシエーツ(※社員のこと)のための利益分配制を開始したのだ。これは多くの理由により、わが社が始めた制度の中で私が最も誇りに思っているものだ。

・・・・・・

最低一年間、または年に最低1000時間、わが社で働いたすべての社員は利益分配を受ける資格を有する。会社は利益の伸びをベースにした計算式によって、資格を持つ全アソシエーツの賃金の何パーセントかに当たる額を拠出する。それは退職する際、現金若しくはウォルマートの株として手にすることができる。

ロープライス エブリデイ サム・ウォルトン著 同文書院インターナショナル(1992) p192

一定条件を満たす社員は「退職時、会社が成長した分だけお金か株をもらえる」というしくみ。こんな制度があったら、会社が成長するように、社員が一丸となって働きますよね~。

つまりサムは「人たらし」

サムは本当に人の心をつかむのが上手なのです。

サムは、人の性格や誠実さをたいへん鋭く読み取ることができるのです。私が言うのもおかしいかもしれませんが、彼は誤った人選をしませんでした。

ロープライス エブリデイ サム・ウォルトン著 同文書院インターナショナル(1992) p88
クロード・ハリス ウォルマートの最初の仕入れ係 の話

また、こういうこともありました。

私はある日、彼が担当するソーダ水売り場の前で立ち止まって話をしたところ、彼が給料から貯金をしていることを知った。自分の家計管理ができるなら、店の管理もうまくやるだろうと常々思っていた。

ロープライス エブリデイ サム・ウォルトン著 同文書院インターナショナル(1992) p89

サムはこの社員を別な店舗に移動させました。そのお店の近所には、ちがうウォルマートがあります。2つの店舗がライバル関係になったのです。

サムは全部わかっていて、『どんどんやってみなさい』と言ってくれました。あの人はいつもそんなふうにいろいろなことに挑戦していましたから。提案に対していつも懐の深かったことがサムが成功した理由の一つだね。今でもそうさ

ロープライス エブリデイ サム・ウォルトン著 同文書院インターナショナル(1992) p90

モノがない時代に大成長したウォルマート。しかし、今は別な見方をされています。



ディープエコノミー ビル・マッキベン著

「ウォルマートが地域、環境を破壊している」と、いろんな人が指摘しています。ココでは「ディープエコノミー」から、いくつか引用しますね。

ディープエコノミー 生命を育む経済へ [DIPシリーズ]
ディープエコノミー 生命を育む経済へ

 

「個性」を認めない

人間にも個性があるように、農産物にも「個性」があります。今日買ったキャベツは星形でした。

おまけに虫食い


イメージ通りではないかもしれませんが、これが「野菜」だと思うんです。

大企業は「個性」を認めない

ところが、大企業は「個性」を認めません。

その小さな共有の農場は、NAFTA以後、巨大資本と効率化の公約を掲げてメキシコに乗り込んできたアホールド、ウォルマート、カルフールなどの世界的な巨大スーパーマーケットに農産物を卸そうとした。ところが、温室や農薬につぎ込む資金がないために、彼や付近の農家はスーパーマーケットチェーンのエグゼクティブが要求するような完璧な丸みのトマトを育てることができなかった。

ディープエコノミー ビル・ベッキマン著 英治出版(2008) p24

「ウチの陳列棚に合わない野菜は買いません」という事ですよ。巨大スーパーが出店すると、個人商店がつぶれていきますから、農家は農産物を卸す場所がなくなってしまいます。

ただコレ、ウォルマートやアメリカだけの話ではなく、世界中で同じような事態が起きています。

Aさまへ
 Aさまが当社オーガニックブランドへ納入したニンジンの茎が長すぎることが、本日実施した品質管理検査で判明いたしました。つきましては、今後は選別を厳格に行い、茎のない、あるいは極めて短いもののみを納入していただけるよう、お願いいたします。そうしていただけないと、当該品をすべて返品することになります

オーガニックラベルの裏側 クレメンス・G・アルヴァイ著 春秋社(2014)p77
オーガニックラベルの裏側: 21世紀食品産業の真実
気鋭の生物学者・ジャーナリストが、「環境と人に優しい」というイメージの先行するオーガニック食品が、工業製品さながらに生産されている実態を体当たりルポ。共食いする鶏。産まれたその日にシュレッダーで切刻まれる雛。形が悪いだけでゴミ箱行きの野菜…。知られざる世界がここにある。

「オーガニック」でも、こうなのです……。こういう条件をクリアした農作物だけが店頭に並ぶって、知っていましたか?

消費者も「個性」を認めない

こんな実験をした方がいます。

「社長、にんじんの色や形の選別をゆるくすると安くなるんじゃないですか。1袋の重さを計らず、だいたい同じにして、大きさ、形はきちんとそろってなくてもいいのではないですか。昔の市場の一山いくらって感じですよ」

食品の裏側2実態編 安部 司著 東洋経済(2014) p181
食品の裏側2 実態編: やっぱり大好き食品添加物
かつて「歩く添加物辞典」「食品添加物の神様」と呼ばれていた男が、 自分の売った添加物でつくられたミートボールを自分の娘が頬張る姿に衝撃を受け、 つとめていた食品添加物商社を退社し、一冊の本を書いたのが2005年のことでした。 その一冊の本、『食品の裏側』は日本社会に大きな衝撃を与え、60万部のベストセラーとなったのです...

この方はお店の一角を借りて、にんじんを売ってみました。重さ、大きさをバラバラにしたことで、手間もかからず結果として、3割以上安く設定できました。

 私は自信満々でした。お客さんには安いと喜んでもらえるし、形の悪いにんじんもムダにならずに済みます。
・・・結果はどうだったでしょうか。
 さんたんたるものでした。お客さんは商品を手にとっては戻し、下から探し出し、気に入らないと棚に乱暴に投げ戻すのです。

食品の裏側2実態編 安部 司著 東洋経済(2014) p182

お店の社長さんが、この結果を見て言いました。

「安部君のいうことは正しいんだけど、理想に近いんだ。これが今の日本の消費者なんだよ。本当は野菜のトレーも袋もいらないんだ。トレーはゴミになるのはわかっているし、袋に入れず、必要な本数だけ買ってもらえばいい。でもそれをやると、売り場が荒れる。しかも売り場は一度荒れると、どんどんエスカレートしていく。すると、買わなくなる消費者がいる。売り場は照明を必要以上に当て、いつも明るく、きれいに見せないとダメなんだよ。」

食品の裏側2実態編 安部 司著 東洋経済(2014) p182

売り場が荒れる。私も近所のお店で見ます。

そのスーパーは決まった曜日に朝市をします。段ボールに入っている野菜を、ビニールに詰めないでそのまま売っています。客は 取っては戻し、取っては戻し…キウイフルーツなどは、押す人もいます。そして戻すのです。





また、生協の共同購入は、届くまでどんなものが届くかわかりません。

外側の葉を取ったら 内側は白っぽいよね 菜 

「この前頼んだ白菜が真っ白だった。緑の葉が少ししかない。変だよね。」と言う方が。

鮮度に問題はなく、虫食いや痛みも全くなかった、とのこと。その人の想像している「白菜」と、色がすこし違ったようです。


今の日本では、野菜は遠く離れた場所で育ちます。消費者は実際に野菜を育てたことがないし、畑に入ったこともありません。「野菜には個性がある」という事実を知らないのです。


「大きい企業」が「小さい企業」を押しつぶす

大型店舗ができると、地元商店街が衰退します。

大型店にテナントとして入り、結果として元の店舗が空になる場合や、大型店に客を奪われて閉店する場合…いろいろあります。

ウォルマートがアイオワ州に急進出していた数年間で、州内では555の食料品店、298の金物店、293の建築資材店、161の雑貨店、158の婦人服店、116の薬局が店を閉めた。新しい大型ショッピングセンターが生み出す雇用者数はその差を埋めることはできない。

ディープエコノミー ビル・ベッキマン著 英治出版(2008) p146

これは、我々消費者にも問題があります。大きなお店があっても、近所のお店で買い物をすればよいのですから。

「大きい地方」が「小さい地方」を押しつぶす

まちをひとつの会社に見立て、小さくても確実に稼ぐ仕組みをつくり、民間の力で地域を変えている木下斉さん。

稼ぐまちが地方を変える 誰も言わなかった10の鉄則 (NHK出版新書)
地方は消滅しない! 縮小社会を生き延びる術、本気の人だけに教えます! 人口減少社会でも、経営者視点でまちを見直せば地方は再生する! まちおこし業界の風雲児が、地域ビジネスで利益を生むための心構えから具体的な事業のつくりかた、回し方までを、これからの時代を生き抜く「10の鉄則」として初公開。自らまちを変えようとする仲間に...

著書で『まちづくりを成功させる「10の鉄則」』というのを紹介しています。詳しくは、本を読んでもらいたいのですが、ココでは鉄則7『「稼ぎ」を流出させるな』から引用します。

 例えば、地域にチェーンのコーヒーショップが開店したとします。その利益は地域からよその本社に行くため、地域経済にとっては持ち出しになります。あるいはチェーンのショッピングセンターが出来た場合も同様です。そこに並ぶ商品のほとんどは地元で生産されておらず、スタッフはパートタイマーばかりで、営業利益は地域外に流出していきます。

稼ぐまちが地方を変える 木下 斉著 NHK出版新書(2015) p132

規制緩和で、大企業、外資系がふえましたよね。そこで使ったお金は、本社がある大都市、外国に流れていきますよ。そうやって、地方のお金が流れていくんです。

ちなみにコレ、「企業」「地方自治体」「国」でも同じですよ!

富の一極集中が、あらゆるものを分断する

今の大企業の仕組みでは、最終的に富が巨大企業の本社に集中します。その結果、貧富の格差が開くのです。

ウォルマートは巨大ネットワークによって遠く離れた工場型農場から運び込まれた食料品を販売して1日に100万ドルを得ている。夜になってレジを閉めると、その金のほとんどは単にアーカンソーにある本社に吸い上げられるだけだ。仕入先(鶏をさばいて手根管症候群を患っている人々)へ支払いを済ませ、「職場の仲間」に法定貧困レベルの賃金を与えた後、利益はすでにパンパンに膨らんだ同社の相続人や重役(もちろん株主もだが、その中には年金プランを通して投資している普通の人々も含まれる)の銀行口座へ行きつく。

ディープエコノミー ビル・ベッキマン著 英治出版(2008) p225

ウォルマートのような巨大企業が「格差を広げるきっかけ」を作り

  • 金が集まる都市部、衰退する地方
  • 成長する分野、成長しない分野 
  • 金持ちはもっと金持ちに、貧乏はもっと貧乏に

コロナ禍でこういう「格差」がさらに広がり、人々を不幸にしているのでは?

今、私たちが生き残るためにできること

「大量生産」「大量消費」は、格差を広げ、富を集中させる「3つの転嫁」を作り出しました。

  • 技術的転嫁
  • 空間的転嫁
  • 時間的転嫁

の結果が、コレなんです。

利用可能な化石燃料が減少していることだけが、私たちの直面している限界ではない。実際、それは最重要問題ですらない。石油がなくなる前に、地球がなくなってしまうのだから。

ディープエコノミー ビル・マッキベン著 英治出版 p30

私たちは、この転嫁から逃げなければいけません。大企業から搾取されては、人として生活できない時代だからです。

大企業は言葉巧みに我々を狙っていますよ。判断を「他人任せ」にすると、彼らの餌食になりますから、自分で調べて、納得して選びましょうね。

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