【大人が読んでも面白い】中高生に読ませたい、リアルなお金の本はコレ!

この世でいちばん大事な「カネ」の話、カイジ「命より重い」お金の話 本いろいろ

日本では「お金の話」を敬遠する傾向があります。けれども、18歳から成人扱いの今、小さいときからお金に関する考え方を持つのは、ものすごい大切なことです。

だってね、18歳になったら連帯保証人になれちゃうんですよ(後で詳しくご説明します)。

18歳から“大人”に!成年年齢引下げで変わること、変わらないこと。 | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン
成年年齢が、2022年4月から、20歳から18歳に引き下げられました。成年になると何が変わるのか、私たちの暮らしにどのような影響がもたらされるのか、確認しておきましょう。

これがどれだけ大変なことか!リアルに想像できるように、教育しなければいけません。これは「本人のため」「カモにならないために」必要なコトです。

そこで、子どもの教育に役立つ「お金の本」を2冊ご紹介します。もちろん、大人が読んでも面白いですよ。


この世でいちばん大事な「カネ」の話 西原理恵子

この本は、西原さんの半生を描いた本です。

この本を読んだ時の衝撃は忘れられません。

子どもに伝えたい、カネの話がすべて書いてある!

おまけに、大人の本音と建前が、リアルな体験を元に書いてあります。ものすごいドロドロ……こんな素晴らしい教科書はありません。

西原さんの人生を貫く、3つの体験

この本は多分「子どもに読んでもらう」と想定しているのでしょう。漢字にはフリガナがふってあります。

そこまでして、彼女が「子どもにも知ってもらいたい事」はズバリ、彼女の体験から生まれた「おカネとの付き合い方」

その、強烈な3つの体験談と、そこから生まれた「おカネとの付き合い方」をご紹介します。


幸せいっぱいの原体験

西原さんが生まれ育った場所は、みんな貧しいけど活気があふれる港町

人って気候がよくて、食べる物に困らなければ、お金なんかそんなになくたってカリカリしないで暮らしていけるものなのよ。

この世でいちばん大事な「カネ」の話 西原理恵子著 理論社 p14

漁師さんの街だから、おいしい食べ物がたくさん。魚を触った手でお金をつかむから、お札には魚のウロコや血が……。けれども、それが普通。

周囲の人もおおらか。西原さんは、身も心も、とても満ち足りた時間を過ごしました。


二度と戻りたくない、つらい体験

その後引っ越した場所が、不穏な空気がただよう工業団地。周囲の大人が、常にイライラして、子どもを殴っていたそうです。

西原さんは、ここで負の連鎖を発見します。

 地元に残った女の子は、だいたい18くらいで結婚する。旦那はヤンキーあがりでたいていは日給の仕事して、1DKくらいのアパートで子どもが増えて、旦那の収入では生活はいつもギリギリ。子どもは手がかかるし、生活はどんどん苦しくなるしで、あ~ら、不思議。いつの間にか、あの「いつも怒ってて、太って、へんなパーマかけてるお母さん」の一丁あがり。

この世でいちばん大事な「カネ」の話 西原理恵子著 理論社 p38

このままじゃ、人生の「行き止まり」にズルズル行ってしまう……。

この本を読むと、これが「ものすごい恐怖」として魂に刻み込まれているのを感じます。


高校中退させられた事件

ちょっとした事件を起こした西原さん。いつもなら休学扱いなのに、なぜか今回は「自主退学」にさせたがる学校を訴えました。お父さんのすすめとはいえ、なかなかできる事ではありません。

その結果、学校が「自分を守るためにウソをつく」現実にぶち当たります。

 裁判に負けるわけにはいかないと考えた学校側は、勝つためにはどんな手でも使う気だった。それで、退学にしたわたしたちについて、山のようなウソを並べた資料を一人一人につくりあげ、それを全校生徒の親やマスコミに流した。

この世でいちばん大事な「カネ」の話 西原理恵子著 理論社 p66

……これだから、マスコミの情報なんて、信じちゃいけないのですよ。専門家だって、「身を守るため」「お金のため」なら平気でウソをつきます。

 退学になったわたしが大検の受検をめざしているとわかると、それに必要な高校在学中の単位証明書を「訴えを取り下げない限りは出さない」と脅してきて、それでもこちらに裁判をやめる気がないことがわかると、今度は「お金はいくらでも払うから」と、こっそり言ってきたりもした。

この世でいちばん大事な「カネ」の話 西原理恵子著 理論社 p67

人として、やって良い事、悪い事があると思うのですよ。これは「絶対悪い事」

だからこの本は、子どもが「学校なんてこんなもんだ」「教師だって色々いる」と教えてくれる、絶好の教科書なのです。

西原さんの人生を、ビジョナリーカンパニーに当てはめると……

この本を読んでいて、「西原さんの半生は、ビジョナリーカンパニーに当てはまる」と気付きました。

ビジョナリーカンパニーでは、

  • 何があっても揺るがない「企業理念」
  • 企業理念を達成するための大胆な目標「BHAG」

を決めて行動した会社が、大きく発展する可能性を持つ、と言っています。

これを西原さんに当てはめると、

  • 企業理念:いつも怒ってて、太って、へんなパーマかけてるお母さんにはならない
  • BHAG:この東京で、絵を描いて食べていく

さらに、西原さんは徹底的に自己分析。予備校で最下位という事実から逃げ出さず、

  • 最下位なら最下位の戦い方をする
  • 描いて描いて描きまくって、自分の「得意分野」「苦手分野」を知る
  • 「それならここで勝負だ」ってやりたいこと、やれることの着地点を探す

これを、心に誓いました。これも、心をおだやかに保つ秘訣なんですよね。

この考えにピッタリくるのが「平安の祈り」

「平安の祈り」
神様、どうか私にお与えください
変えられないものを受け入れる落ち着きを
変えられるものを変える勇気を
そして、その違いを見極める賢さを

ココで大切なのは、自分が「できるコト」「できないコト」を正確に見極めること。これができないと、正しい「企業理念」「BHAG」を決められず、生きていくのが苦しくなります。

西原さんは、痛い思いをしながら自分を正しく分析。「企業理念」「BHAG」を明確にして実行した結果、現在活躍しているのは、皆さんご存知の通りです。

鳥頭の城
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私はこの本を、子どもが中学生になった時プレゼントしました。

子どもは「この本には、学校で習ったことと反対のことが書いてある」と言っていましたよ。私の想いが正しく伝わったみたいで、本当にうれしかったです。


カイジ「命より重い!」お金の話 木暮太一

この本はマンガではありません。「まじめな経済の本」です。

ただ、「カイジ」というマンガが下地になっています。

マンガを読んでいる人の方が楽しめる内容ですが、知らなくても大丈夫。注釈がたくさんついています。ちなみに、私はマンガも映画も見ていませんが、違和感なく読めました。

著者の木暮さんは、カイジの生き方を例に、こんなことを分かりやすく説明しています。

お金を「稼ぐ」「貯める」「使う」「守る」のには、技術が必要

お金は、稼ぐだけじゃダメなのです。目的をもって貯め、良いタイミングで使い、それまでは守ることが大切。さらに、それぞれに別の考え方・技術が必要なのです。

 「老後の安心のためには1億円が必要」などと言われている超高齢化社会で、退職金を投資につぎ込み、破産する人が後を絶ちません。

カイジ「命より重い!」お金の話 木暮太一著 サンマーク出版 p31

銀行、投資会社はその手のプロです。銀行残高を知っていますから、いろんな方法を使い、お金を奪おうとします。

また、社会構造が昔のままなので、今の考えが通用しないことも。どういうことか、詳しくご紹介します。

「年功序列型」と「成果報酬型」

「年功序列型」と「成果報酬型」とは、「働き方と給料の考え方」のことです。

「年功序列型」
新卒で正社員として入社、退職まで同じ会社で働く。

最初のうちは給料が安いけど、結婚、子どもが生まれ、家を建て……という頃に、だんだんと給料が上がるしくみ。今までの日本の主流がコレ。
「成果報酬型」
新卒、年齢、学歴問わない。業績を上げればOK。

ただし、正社員ではない。仕事がなくなったり、働けなくなれば仕事を失う。給料の額も、本人のがんばり次第。

今は「成果報酬型」「非正規社員」が増えています。この働き方だと、コロナ禍のように何かあれば仕事を失い、路頭に迷ってしまいます。

さらに、安定だと思われる正社員にも、種類があるのです。


仕事の内容じゃない「必要経費方式」

これは、「生活のためというより、お小遣い稼ぎの仕事」と考えられる仕事の給料には、「生活に必要な経費」が含まれない、という考え方です。

 スーパーのレジ打ちの仕事は、これまで主婦のパートさんが多く行っていました。仮に「スーパーのレジ打ちは主婦の仕事」という通念があったとしましょう。そうしたら、レジ打ちの仕事には ”その人の家賃” や ”子供の養育費” を考慮する必要がなくなり、自給がそのぶん安くなります。というのは、それらは旦那さんの給料の中にすでに考慮されているからです。

カイジ「命より重い!」お金の話 木暮太一著 サンマーク出版 p52

けれども時代が流れ、経済や働き方が多様化していますよね。そんな考えはなくなっているのに、「給料を決める基準だけが昔のまま」なのです。

「正社員なのに、生活できないぐらい安月給」は、この考え方から生まれます。求職中の方は、覚えておいてくださいね。

借金をするのは「見栄」

借金をしてまで、お金を使うのはなぜでしょう。

 収入以上にお金を使ってしまう理由をひと言でいうと、それは “顕示欲” があるからです。

カイジ「命より重い!」お金の話 木暮太一著 サンマーク出版 p62

たとえば、ドラえもんの「スネ夫」。彼はたしかに、お金持ちです。だから、使ってもよいのですが、いつも最新のおもちゃを見せびらかしています。あれは「顕示欲」ですよね。

ああいう大人、社会にもたくさんいます。そして、顕示欲を利用して金儲けする会社も

ブランド品などは典型例です。「100円の紙袋」「100万円のブランドバッグ」は、入れ物としての「利用価値」は一緒。ただ、値段が違うだけです。

 顕示欲による消費は、本当に欲しいから買っているわけではありません。ましてや必要に迫られて買っているわけでもありません。

カイジ「命より重い!」お金の話 木暮太一著 サンマーク出版 p64

利用用途に応じて、買える値段のモノを買えばよいのに。テレビやマスコミ、周囲の視線に踊らされ、顕示欲のために借金をするのは、あまりに無防備だと思いませんか?


最初にご紹介した西原理恵子さんのお父さんが「行ってしまった」のも、「見栄」が原因でした。

会社で儲けたお金も湯水のようにバクチに使ってしまって、そのせいでいよいよ、家にお金が入ってこなくなっても、まだ見栄の生活をつづけた。

この世でいちばん大事な「カネ」の話 西原理恵子著 理論社 p67

そして、命を落としたのです。


いい借金はある?

では、普通の生活を送る上で、いい借金はあるのでしょうか?

 経済学的に考えると、個人がする借金は、基本的にすべて ”悪い借金” になります。

カイジ「命より重い!」お金の話 木暮太一著 サンマーク出版 p90

住宅ローンを組んだ人の中で「支払いができなくなる人」の割合は、約2%。

住宅ローンが払えないとどうなる?手遅れになる前に正しく対処しよう
景気の影響などで住宅ローンの支払いが難しくなるケースも珍しくありません。ローンを滞納し、払えなくなった場合家や残債はどうなるのでしょう。本記事では住宅ローンが支払えなくなってしまったらどうなるのか、その流れから対処法までご紹介します。

これが、コロナ禍で10%になるのでは?と言われています。とてもじゃないけど、「いい借金」とは言えません。

ちなみに、企業の運営資金としては「いい借金」もあります。

お金は、「借りる」のではなく「買う」のが正しい。

無担保で16億円借りる小山昇の実践銀行交渉術 小山昇著 あさ出版 p27

お金がないと支払いができません。黒字でも、支払いができなければ倒産します。だから、企業の借金には「いい借金」があるのです。そんな企業でも、長期借入は「返済期日が1年を超えるもの」

短期借入金と長期借入金はどう違う? それぞれのメリット・デメリットを解説 | THE OWNER
事業を継続していくために資金が必要であることは言うまでもない。しかし手元に資金がなく、金融機関などで資金を調達しなければならないことがある。借入金には短期借入金と長期借入金があるが、どのような違いがあるだろうか。それぞれの種類や特徴を解説す

「35年借入」はあり得ません。

ローンを組むとき、35年後に会社や自分がどうなっているか、だれにも分かりませんよね。だから、住宅ローンも「いい借金」とは言えないのです。

借金のしくみを知ろう

マンガの中でカイジは契約書を読まずにサインします。これは絶対マネしてはいけません。

連帯保証人、保証人も同じです。白紙にサインもダメ。サインするときには、カーボン紙が挟まっていないか、下に別の紙がないか、確認するぐらいがよいのです。

ちなみに、連帯保証人と保証人の違いを、ザックリご紹介します。

  • 連帯保証人:借金した人が払えなくなったら、全額支払わないといけない
  • 保証人:借金した人が払えなくなっても「あの人には支払い能力がある」と主張できる。保証人が2人いるときは、支払う金額は1/2になる。
連帯保証人とは?メリットやリスク、民法改正に伴う変化を徹底紹介 | 債務整理弁護士相談広場
連帯保証人とは、主債務者が借りた借金の返済について責任を負う人のことを指します。連帯保証人になることを引き受けた場合、ある日突然債権者から借金の残額について全額の返済を求められても文句は言えません。安易な気持ちで連帯保証人を引き受けないよう...

けれども、連帯保証人、保証人にはならないのが一番です。「見栄」「顕示欲」から保証人になるなら、なおさら。絶対なってはいけません。

また、企業だと保証がもっと複雑になります。詳しく知りたい方は、「無担保で16億円借りる小山昇の実践銀行交渉術」の一読をおすすめします。



共通する「お金との付き合い方」

ご紹介した2冊の本に共通する考え方は、

  1. おカネとの付き合い方を、はっきり意識しよう
  2. 人生では、勝負をつづけられるのが一番大事
  3. 見栄を捨て、本当の価値を分析しよう
  4. お金を稼ぐだけが、人生の仕事ではありません

これを、1つずつ説明します。

お金との付き合い方を、はっきり意識しよう

「酒は飲んでも、飲まれるな」と同じ。お金は使うモノであって、使われてはいけません。

「ボーナスが出たから、何を買おうかな?」は、お金に使われてる状態。必要なモノがあるから買うのではなく、「買う」という行動に振り回されているだけなのです。

お金の使い方を分析して、見栄や顕示欲に振り回されているのであれば、すぐにやめましょう。

人生では、勝負をつづけられるのが一番大事

カイジが勝負をつづけられるのは、致命的に負けないからです。

”致命的に負けない” ためには、何を差し置いても “自分が負けられる範囲” を知ることです。そして、限界まで損をしてしまったら、きっぱりあきらめて撤退することです。

カイジ「命より重い!」お金の話 木暮太一著 サンマーク出版 p205

そのためには、自分のことを正しく知る必要があります。

見栄を捨て、本当の価値を分析しよう

「自分」「買い物」「ギャンブル」。どれも、本当の価値がどうなのか、見栄を捨てて正しく分析する必要があります。

西原さんは、ギャンブルに関して

 それは、ギャンブルが本来は「そういうものだとわかっているけど、だまされることを楽しむ」という、大人の粋な遊びだからだと思う。

この世でいちばん大事な「カネ」の話 西原理恵子著 理論社 p132

と言っています。暇つぶしにするのがギャンブル。決して生活費を稼ぐ場所ではないのです。

ブランド物のカバンも同じ。有名人がブランド物を見せびらかすのは、「自分が広告塔だから」だし、金持ちがブランド物をアピールするは、庶民にも買ってほしいから。「保有している株価が上がるように」など、投資目的が隠れています。

そういう事実を知り、買おうとしているモノに「頑張って稼いだお金と同じ価値があるのか」真価を見極めるクセ付けが大切です。

お金を稼ぐだけが、仕事ではありません

木暮さんは本の中で、こう言っています。

人を救ってきたのはお金ではない

カイジ「命より重い!」お金の話 木暮太一著 サンマーク出版 p228

西原さんは、

 「エサをもらって生きる」だけじゃ牛や馬と同じになってしまう。人でなくなってしまう。

 そうじゃなくって、やっぱり「働くことができる」「働ける場所がある」ってことが、本当の意味で、人を「貧しさ」から救うんだと思う。

この世でいちばん大事な「カネ」の話 西原理恵子著 理論社 p132

と言っています。

人は、生きる手段の1つとして、仕事をして、お金を稼いているだけ。仕事をするため、お金を稼ぐために、生きているのではありません。

お金がなくても、食べ物があれば生きていけます。そして、食べ物を得るためなら、会社で働く以外にも方法があります。

たとえば、発明家の藤村靖之さんは、「月3万円ビジネス」を提唱、実際にご自身のビジネススクールで手法を教えています。

具体的にいうと、

  • 10坪程度の鶏を平飼いにし、安全でおいしい卵を1日20個売る
  • 市民農場(レンタル農場)をはじめる
  • オーガニックのお弁当を週に3回、15件に届ける
  • 薪を割って乾燥させ、薪ストーブを使っている人たちに届ける

非電化思考のすすめ 藤村靖之著 WAVE出版 p159

こういうことをきっかけに人間関係を作れば、地域で生きていくことは可能。「顕示欲」がない人間関係は、「生きること」につながるのです。

生きるためにすることが「仕事」です。だから、お金にならなくても、生きていくことにつながれば、それは立派な仕事といえます。

お金は、「仕事の大切さを表す1つの手段」です。仕事の内容を考えず、お金に振り回され、その向こう側にある「生きること」がおろそかになっては本末転倒だと思いませんか?

この2冊の本は、生きることの意味、お金の本質を分かりやすく教えてくれます。ぜひ読んでみてください!

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