「日本人の叡智」という本があります。
この本は、古書を愛してやまない磯田道史さんが、今まで読んだ本の中から「今こそ日本人に知らせたい一言」を紹介、まとめた本です。
それが、今聞いてもまったく古びていないのです。本当に、耳が痛くなる言葉ばかりが集められています。
一冊丸ごとおすすめなのですが、特に「面白い発言」をココでご紹介します。
分別の肝要は仁愛【小早川隆景】
小早川隆景は戦国、豊臣期の武将。
とくに二つの決断で有名。第一は本能寺の変のとき。隆景は秀吉と対陣していたが、撤退する秀吉軍を追撃しなかった。果たして秀吉は天下をとり、毛利家は豊臣政権下で領土をまっとうした。第二は朝鮮出兵のとき。侵略をあせる石田三成をいさめ、負け戦になった場合、運平を無事に朝鮮から日本に連れ帰る撤退計画の必要を説き、日本を救った。
日本人の叡智 磯田道史著 新潮新書 p18
あとになって、「どうやったら正しい決断ができるのですか?」ときかれた時、
- 分別の肝要は仁愛(大切なのは、そこに愛があるかどうか)
- 仁愛なき分別は智が巧みでも皆あやまり(愛がなければ、それっぽくても、全部間違い)
と言ったそうです。
聞かせてやりたい「国会議員」「会社の経営者」「組織のトップ」がたくさんいますよね~。
茶碗が割れたのより、お前が苦悩する方が、わしには困る【徳川治保】
徳川治保は水戸藩六代目。税金に苦しんでいた庶民のため、自分の生活費を倹約して、そのお金で稗(ひえ)を買って、飢えている庶民に配ったそうです。
「民を苦しめない政治をしていれば、あとで必ず国の利益はついてくる」
日本人の叡智 磯田道史著 新潮新書 p63
という考えの持ち主。そんな治保が持っていた水戸家重宝の茶碗「苔清水」を、家臣が割った時の言葉がコレ。
茶碗が割れたのより、お前が苦悩する方が、わしには困る
日本人の叡智 磯田道史著 新潮新書 p63
当時なら切腹モノですよ。それなのに、こんなことを言われたら……。死ぬまで忠義を尽くしますよね。
求心力って、本来コレが原動力では?けれども、最近は金で買うらしいです。そして、金の切れ目が縁の切れ目に……寂しい限りです。
隠すというのは潔白でないことから起きる【松平定信】
松平定信は八代将軍徳川吉宗の次男。白川藩11万石の藩主になりました。
定信は当時「御内証」と呼ばれて極秘にされていた藩の財政を公開。その時のセリフがこれです。
「隠すというのは潔白でないことから起きる。自分は腸を出して政治をする心底だ。隠すのは為にならない。今年は一万両の蓄えができたと隠さず言えば、みな譜代の家来だから安心する。隠すから、へたへたと元気がなくなるのだ」(『御行状記料』)
日本人の叡智 磯田道史著 新潮新書 p75
これは、一般家庭にも言える事。
子どもが勉強するとき、「塾に行っていいのかなぁ」「参考書買えるのかなぁ」と心配するって、ご存知ですか?
私は家庭教師をしていた時、生徒に言われました。そして「お子さんが生まれたら、お金のことは正しく話してあげてください」と約束させられたのです。
その後結婚、出産。子どもが中学生になった時、我が家の家計の収支、貯蓄内容、貯蓄額を細かく報告しました。そしたら、ウチの中が明るくなったんですよね~。それからは毎年、貸借対照表を作って、家族会議を開いています。
「隠し事をしない」というのは、健全な関係には絶対必要なこと。だから、新型コロナでも、遺伝子組換えでも、ゲノム編集でも同じです。隠す人は信用できません。
行政改革といふことは、よく気を付けないと弱い者いぢめになるヨ【勝海舟】
これには続きがあって、
全体、改革といふことは、公平でなくてはいけない。そして大きい者から始めて、小さい者を後にするがよいヨ。言い換へれば、改革者が一番に自分を改革するのサ。
日本人の叡智 磯田道史著 新潮新書 p111
振り返って現代。国会議員に当てはめてみましょう。
企業献金を受け取らない代わりに、政党助成金という制度を作ったはずなのに、共産党以外は両方受け取っています。
文書交通費も……。1日在籍したら100万ですか?ってツッコんだ人が、以前同じ手口で100万もらっていて。寄付しましたっていうから「どこへ?」と思ったら、政党に寄付していたというオチが。
こんなことをしていて「庶民だけ増税で改革」って、納得するわけないのです。
最後に1つだけ。これは私たちの肝に銘じたい言葉です。
提灯や国旗を掲げてお祭り騒ぎはしたけれど、日英同盟の何物たるか位を知らぬやうでは、真の教育はまだ出来て居ない【長岡護美】
長岡護美は熊本藩細川家54万石の六男。ロンドンに計8年留学しました。長い海外経験から、日本人の島国根性を心配。
明治の庶民は帝国憲法も日英同盟もその条文内容を知らぬまま、提灯行列で祝った。なんとまわりの雰囲気に乗りやすいことか。長いものに巻かれぬ長岡の目には、その姿が危なっかしく見えたのだろう。
日本人の叡智 磯田道史著 新潮新書 p121
冒頭のように語ったそうです。
振り返ってみれば、コロナワクチンも「効果がある」というのを鵜呑みして打った日本人が多数では?
ゲノム編集動植物も「短期間で品種改良」「今までのモノと変わらない」と言われていますが、情報が全く公開されていない新技術ですよ。鵜呑みにしますか?
私たちは、歴史から学べることがたくさんあるのではないでしょうか。古文書を読むのは大変ですが、磯田道史さんが分かりやすくまとめてくださっています。
図書館にもあるかもしれません。読みたい方は、問い合わせてみてください。
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