福島原発のメルトダウンを予言した、元・東電原子炉設計者 木村俊雄さんが本を出しました。
夢のような新技術だったはずの「原子力発電所」は、なぜダメなのか。詳しく書かれています。
いろんな人の、いろんな意見があるとは思います。けれども、その意見は、テレビ、ラジオ、雑誌の受け売りではありませんか?ちょっと立ち止まって、内部の人の意見を読むのも、面白いですよ。
大企業や政府が何を狙っているのか、よく分かる一冊です。
原子力は手に余る
原子力はなぜ使ってはいけないのでしょう。それは、「手に余る」からです。ここでは、どう「手に余る」のか、いくつかの項目に分けてご紹介します。
事故原因が断定できない
原発の現場を知るエキスパートとして、私はいくつかの原発事故関連の訴訟に関わっているのだが、いまでも事故原因が津波であるとは断定されていないのだ。
原発亡国論 木村俊雄著 駒草出版 p6
なぜなら、東電が出し渋っていた「過渡現象記録装置」の生データを入手。解析した結果、
……3月11日の地震の揺れが到達した1分20秒後に冷却水の流れが止まり、燃料を冷やせない状態に陥っていることを示していたのだ。
原発亡国論 木村俊雄著 駒草出版 p113
津波が原子力発電所に到達したのは、本震の揺れから40分以上経過してからです。
結局、夢のような新技術も、ふたを開ければこんなモノ。原子力の平和利用はあり得ないのです。
数万年保管が必要な猛毒ゴミを出す
原子力発電所を動かせば、核廃棄物ができます。これは、数万年にわたって有害な放射線を出し続ける猛毒ゴミです。
日本政府は、これを「安全に」埋めようとしています。けれども、地震大国の日本に、安定した地層はありますか?
経済産業省 資源エネルギー庁のコラムにも、
今のところ地層処分以外の現実的な選択肢は、どの国も持ち合わせていません。廃棄物を発生させてきた世代の責任として、いま最適と考えられている地層処分の実現を目指しながら、将来世代による再選択の余地を残し、より良い方法の開発に向けて努力を続けることが適当と考えられます。
経済産業省 資源エネルギー庁 放射性廃棄物の適切な処分の実現に向けて コラム 2022/2/17引用
つまり、「将来の人、よろしくね~」と、猛毒ゴミの処理を丸投げしているのです。好きなだけ贅沢して、借金を子や孫に押し付けるのと一緒。押し付けられた方は、たまったものではありません。
正確なデータを取れない
原子力発電所でも、安全を守るためデータがとられています。けれども、一部装置は設置したら取り外せません。
これが火力発電所であれば、流量計測箇所をとり外してメーカーの工場に送れば、きれいに校正メンテナンスされて、校正後は100トンの水を流して100トンの水が出る流量計測箇所に戻すことが可能だが、当然原発の場合はそうはいかないことはおわかりだろう。
原発亡国論 木村俊雄著 駒草出版 p65
だから、
原子炉はその特殊性から実測値を計測することができない
原発亡国論 木村俊雄著 駒草出版 p65
のです。水を流せばゴミがつきます。熱の影響もあります。それを、正確に把握できないのです。
それで、原子力発電所を安全に運転できますか?
それなのに、なぜ原子力を使う?
事故から10年以上経っても原因を断定できない、猛毒ゴミの処理ができない、正確なデータも測定できないプラントを、なぜ作りたいのでしょう。
そこには、こんな理由があるのです。
東電ウハウハ「総括原価方式」
農家が野菜を売るとき、「豊作だから安く買いたたかれる」ことがあります。
けれども、電気にはそれがありません。なぜなら、電気は売る人が値段を決めるからです。そして、買う人は一切文句を言えない法律があるのですよ。
3 経済産業大臣は、第1項の認可の申請が次の各号のいずれにも適合していると認めるときは、同項の認可をしなければならない。
一 料金が能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものであること。
電気事業法 第18条 2022/2/17 引用
つまり、「東京電力が利潤を得るように設定できる」ということです。この会社が、赤字を出して倒産するわけがありません。
政府がこういう法律を作っているのです。
政府も原子力村の一員だから
そういう法律を作る「政府」と「企業」。気をつけないと、癒着しますよね。
農業の世界では、企業と政府の癒着が起きて、大変なことになっています。
日本の厚生労働省に当たる、アメリカ食品医薬品局(FDA)には、「回転ドア」と呼ばれるしくみがあります。これは、FDAの要職→大手化学企業の役職→FDAの要職……と、報酬を受け取り続けるもの。
これと似たのが「天下り」。
結局、電力会社も省庁と癒着しています。
一時期自粛していたことが、こっそり再開されているのです。
原発、止めたらいいことだらけ!
原発はなぜ止められないのでしょう。その理由は「おカネ」です。
けれども、止めても問題ないのですよ。その理由も、この本には書かれています。
廃炉にすれば、地域が栄える
廃炉には長時間かかります。
国と東京電力は、廃炉にかかる時間を最長で40年と発表しているが、福島第一原子力発電所の廃炉作業は遅々として進まず、当初の計画よりも大幅に遅れている。
原発の構造を知る私の見立てでは、まず50年間はかかる。
原発亡国論 木村俊雄著 駒草出版 p119
「廃炉マネー」が50年入ってきます。そして廃炉技術は、他の原発でも応用されるでしょう。そのしくみで、地域を潤す方法も考えられます。
そうやってお金が回っている間に、他の産業をどう興すか、考えられますよね。
総括原価方式をやめて、一般企業と同じにする
この、電力会社が値段を決める法律を変えればよいのです。
「安定して電力が供給されなくなる」という方もいるでしょう。けれども、それは「大量生産」「大量消費」というしくみの問題でもあるのです。
それに関しては、別の記事で詳しく書きます。
そもそも「電気を使わない方法」を考える
知らないうちに、電気を無駄使いする生活を送っていることに気付きましょう。
たとえば、「待機電力」
アダプターも、コンセントにさしているだけで電力を消費するという話が!
いまでは誰もが持っているほどになった携帯電話の充電用アダプターも、コンセントにつないだままだと充電していないときにも電力を消費します。
エコライフ&スローライフのための愉しい非電化 藤村靖之 洋泉社 p34
これは2006年に発行された本の話。今のスマホの充電器とは違います。実際のところ、どうなのだろう……。気になって仕方なくなり、計測器を買ってしまいました!
そして、とりあえずテレビ、通信機器一式の待機電力だけは計算してみました。
1年に消費する電力の20%はテレビ、通信機器の待機電力ということが分かりました。といっても、ここを切るのは……。家族の協力も必要です。どうにかできないかなぁ。
原発を止めるために、私たちができる事
こんな原子力発電所はいらない!と思った方。私たちにも、できる事があります。私たちは微力ですが、無力ではありません。
平和的に、こんなことをしませんか?
選挙で「反原発」の一票を投じる
反原発の人に一票を投じるのは、18歳以上で、投票所に行って記入できる方ならできる事。今は丸を付けるだけの投票もあります。
選挙方法に不都合がある方は、お住まいの自治体に提案してみてはいかがですか?
大手電力10社から電気を買わない
今は「原発の電気は使わない」とうたっている電力会社もあります。私は加入している生協の、原発の電気は使わない電力会社に変えました。
手続きはカンタン。書類を1枚出すだけです。
他の生協でも、同じような取り組みをしています。身近な生協に問い合わせてみてはいかがでしょうか。
電気を熱に戻さない
電気はもともとロスが多いのです。
長年の間、日本の主電源となっている火力発電を例に考えると、燃料であるLNG(液化天然ガス)や石油などを燃やして電力を得る段階で、なんと60%ものエネルギーロスが発生しているのだ。
また、送電線によって家庭に運ばれるまでに、さらに5%のロスが発生するので、合計すると約65%ものエネルギーを犠牲にして電気エネルギーは生み出されているという事実を消費者は知っておかなければならない。
原発亡国論 木村俊雄著 駒草出版 p39
火力発電は、化石燃料を燃やして、電気を作っています。この電気を、また熱に戻すのでは、効率が悪すぎます。
だから、お湯を沸かすのはガスや薪で。無理に、とは言いませんよ。できる範囲でお願いします。そして、電気には電気にしかできないコトをお願いしましょう。
大量生産、大量消費で経済を回す構造にした結果、「ボタン1つでカンタン便利」に慣れるよう、社会は変化してきました。
ただ、そのために自然が破壊され、気候危機が起きているのなら、本末転倒では?
「今だけ」「金だけ」「自分だけ」の政府、企業はこのしくみを変えないでしょう。それなら、私たち一人ひとりが大量生産された家電製品、電気を消費せず、原発に反対する一票を投じればよいのです。
妨害するために色々言う人がいますけどね。子々孫々にきれいな地球をバトンする方が大切です。まずは足元から。一つずつやってみませんか?
そんなとき、この本を読めば、いろんなアイデアをもらえますよ。
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