最近、沖縄米軍海兵隊が「PFOSが入っている排水」を下水に流した、という記事を読みました。
そして、横田基地では「泡消火剤の貯蔵タンクの中身が空になっているのを消防隊員が発見」
最近、米軍基地の近所で大きな話題になっている「PFOS」含む「PFAS」のニュース。
他の地域ではほとんど報道されていません。だからこそ「怪しい」と思いませんか?
PFASは「パーフルオロアルキル化合物、ポリフルオロアルキル化合物及びこれらの塩類」のこと。有機フッ素化合物の総称です。このグループに「PFOS」「PFOA」が入っていて……
- PFOS:ペルフルオロオクタンスルホン酸
- PFOA:ペルフルオロオクタン酸
……長すぎ。だから「PFOS」「PFOA」と書かれるんです。
このPFAS、実は「日本企業も流出させていて」
「世界中で問題になっている」って、ご存知ですか?
けれども、そんなPFASがなぜ作られたのでしょうね。そして毒性はいつ、どうやって分かったのでしょうね。
ココでは、ちょっと難しいPFASを、やさしくご紹介します。分かりやすい本もご紹介しますので、興味のある方は読んでみてください!
便利なPFAS……けれども、毒だった
とても便利なPFAS、最初は原子爆弾を作るときに使われました。ウラニウムを濃縮する際できる「腐食性の高い物質」に耐えたからだそうで……。逆に言うと、PFASがそのぐらい「安定した物質」という事ですよね。
けれども、化学的に安定だからこそ、生物の体内で蓄積されます。初めて作った企業「3M」でも「便利だけど、毒性があるんじゃない?」と最初から問題視されていたようです。
最初の証拠は動物実験からもたらされた。1950年、3Mの科学者はマウスを使った実験で、PFASが動物の血液中で蓄積することを発見した。
永遠の化学物質 水のPFAS汚染 ジョン・ミチェル 小泉昭夫 島袋夏子 安部小涼 訳 岩波ブックレット p11
そして、
PFOAはサルの免疫系を破損することが疑われ、PFOSは高濃度に暴露した動物はすべて死んだ。
永遠の化学物質 水のPFAS汚染 ジョン・ミチェル 小泉昭夫 島袋夏子 安部小涼 訳 岩波ブックレット p11
けれども、この事実はかくされて、PFASは海や川に流され続けました。
突然製造をやめて、世界中が驚いた
そんな「3M」が2000年、突然PFOSの製造を中止したんですよ!
PFOSは1950年代半ばに開発され、以後半世紀近くに渡って様々な用途に使われてきた有機フッ素系界面活性剤であるが、2000年になり最大手の製造企業が環境への配慮を理由に突如製造中止を表明して世界的に大きな衝撃を与えた化合物である。
食品安全委員会のPDFより 2021年9月11日引用
突如製造中止を表明した会社が「3M」です。その原因は、コレ(カッコ内は管理者注)。
EPA(環境保護庁)が入手した3Mの研究で、PFASを原因とする潜在的有害性が示されていた。自主的に止めなければEPAからの中止指示を受けてしまう。
永遠の化学物質 水のPFAS汚染 ジョン・ミチェル 小泉昭夫 島袋夏子 安部小涼 訳 岩波ブックレット p17
つまり、毒性が公的機関にばれそうになったから、「だったら先手を打って中止してしまえ」という事。
「懲戒免職逃れの自主退職」みたいなものです。
訴えらえ、和解
その後、PFAS製造元は、いろいろな形で訴えられました。
2018 年にはデュポン社(DuPont)及びその元子会社であるケマーズ社(Chemours)は、PFOA を含有するテフロンが製造されていたウェストヴァージニア州ワシントンにある施設からのPFAS 流出に関するおおよそ 3,500 件もの請求を和解するために 6億5千万ドル($650 million)を支払うことになりました。時を同じくして、コロラド州、ミシガン州、ニューヨーク州及びペンシルベニア州の水道事業者に対してクラスアクション訴訟が提起されました。水道処理施設内の PFAS は第三者の施設からの汚染が原因となっていたため、水道事業者自体も訴訟における原告となりました。デュポン社の和解と同じ頃に、もうひとつの主要な PFAS 製造業者であるスリーエム社(3M)は、公共浄水施設における PFAS 除去費用として、アラバマ州にある水道事業者に 3千5百万ドル($35 million)を支払うことに合意しました。
米国における PFAS 規制の概要と日本企業への影響-米国における次なる環境法上のテーマ レザ・S・ザルガミー 2021/9/11引用
製造元は、大金を支払うことになりました。ただ、和解するのって、時間がかかりますよね。その間に、PFASは大金を稼ぎ出しています。ダラダラ続く裁判は、製造元にとって好都合なのです。
そして、また作られている
2006年、EPAが「2010年までに米国製造業者は、PFOAとPFOSの使用を95%削減しなければいけない」という枠組みを作りました。
けれども、このしくみは「代替品OK」。
「PFASは炭素鎖が長かったからいけないんじゃない?」3Mはそう思ったようです。「ペルフルオロブタンスルホン酸(PFBS)」という物質をつくり出しましたが……
本当に、大丈夫?
代替品ができたけど……
その後、デュポンは「GenX」という名の合成化学物質を、テフロン製造に使い始めました。
このPFOAの代替物質として開発されたGenXを使用しているのは、DuPontから分離独立したChemoursという会社である。
水ビジネスジャーナル 米でPFOAの代替物質GenXが河川を汚染 2021/9/11引用
これがまた「河川を汚染して訴えられるのでは?」と言われています。
「私たちの目標は、特に GenX のような他の新たなリスクに関連しているので、科学のギャップをできるだけ早く埋めることである」
「米国及び EU における内分泌かく乱作用の規制動向」- 2 月分 2019/2 JFE テクノリサーチ 2021/9/11引用
「アメリカの話かぁ」と思いますよね。けれども、日本も一緒です。
身近な所で、こんな問題に
これだけでも、かなり問題があるPFAS。「日常生活」で、いろんな問題を起こしていますよ~。
加熱すると危険!たくさんある有機フッ素製品
「フライパン」「炊飯器」「ホットプレート」
台所では加熱して使いますよね。フッ素樹脂は、種類によっては「240度以上で気化して有毒ガスを出す」と言われるモノも。
今は「そういう物質は使われていない」とのことですが
業界の自主規制ですからね……輸入品などは対象外では?
ちなみに、クッキングペーパーで有機フッ素化合物を使用している商品があります。
この他にも、こんな記述があれば、
【 商品仕様 】 〇材質:グラスファイバー製(ガラス繊維にテフロン樹脂を浸透させ焼成したもの)
テフロン樹脂=有機フッ素化合物ですよ~
オーブンでは240度以上にはならないかもしれませんが、局所的にはどうでしょう。油がたまっているところなどは、高温になりそうです。
鳥には危険「フッ素ガス」
室内で鳥を飼われている方の間で「鳥類はフッ素の有毒ガスに敏感」というのは、有名な話。
調理器具のこげつきを防止するため使われているテフロン加工ですが、高温で熱せられると、トリさんにとっては有毒なガスが発生します。
さつき台動物病院 HPより 2021/9/11引用
業界の自主規制後は、改善されたのでしょうか。
化粧品の「フルオロ」は……
化粧品の原材料を見てください。
ロート製薬 スキンアクア ネクスタ シールドセラムUVエッセンス より、画像を一部抜粋して加工 2024/1/8
「合成フルオロフロゴパイト」というのがありますよね。
化粧品のラベルの成分表示のなかに「フルオロ」という単語が記載されていれば、ピーファスを使用した化粧品であることがわかります。
これでわかるPFAS汚染 暮らしに侵入した「永遠の化学物質」 原田浩二編著 P16
合成フルオロフロゴパイトは、雲母の結晶中のヒドロキシ基(-OH)をフッ素に置き換えた「PFAS」。
- 合成金雲母
- 合成フッ素金雲母
- 合成マイカ
と呼ばれることもあります。
「フルオロ」と書かれていなくても、こういう成分が含まれていれば「PFAS」が入っている可能性がありますよ~。
中国産アサリからPFAS
米国では、中国産アサリから「PFAS」が検出され、回収騒ぎになったことがあります。
日本では報道されていませんけど……「日本に輸入されているのは大丈夫」って、思いますか?
過去には死者も
ずいぶん前には、こんな事故もありましたよ。
1994年10月、防水スプレーが原因で千葉県内の男性(56)が死亡
国立保健医療科学院HPより 2021/9/12引用
さすがに今は改善されていると思いますが……やはり、有機フッ素化合物は問題が多いのです。
地球温暖化の一因に⁉
短鎖炭素のフッ素化合物は、「地球温暖化の原因」にもなっていますよ。
IPCC第4次評価報告書によれば、温室効果ガス別の地球温暖化への寄与は、二酸化炭素76.7%、メタン14.3%、一酸化二窒素7.9%、オゾン層破壊物質でもあるフロン類(CFCs、HCFCs)1.1%、となっています。
全国地球温暖化防止活動推進センター 温暖化とは?地球温暖化の原因と予測 2021/9/11引用
フロン類にはフッ素が含まれます。
さらに、フロン類の一部は「オゾン層」も破壊します。
フロンの一種であるCFCは、1928年に発明された人工の物質です。化学的にきわめて安定した性質で扱いやすく、また、安価で人体への毒性が小さいなど多くの利点があるため、冷蔵庫やエアコンの冷媒、建材用断熱材の発泡剤、スプレーの噴射剤、半導体や液晶の洗浄液など、幅広い用途に用いられてきました。
環境庁 パンフレット 「オゾン層を守ろう」より 2021/9/11引用(2022/6/28現在、削除されています)
一時の「便利」のために、いろんなモノを破壊しすぎじゃないですか?
私たちの行動が、カギを握る
「永遠の化学物質」と呼ばれる有機フッ素化合物。こんなに問題があるんです。それを、子や孫に押し付けるのは、イヤじゃないですか?
ココでご紹介した通り、大企業は利益優先。消費者が買って、もうけが出るのであれば、手を変えしなを変え、作り続けますよ。
だから今、私たち消費者が「買わない」「使わない」努力をするのが、とても大切なのです。
なお、もっと詳しく知りたい方は、コチラをどうぞ。
かなり専門的なことが、紹介されています。
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