ここでは『人新世の「資本論」』から、
「プラネタリーバウンダリー(地球の限界)」を考えていきます。
プラネタリー・バウンダリー = 地球の限界
2009年、環境学者ヨハン・ロックストロームが、この考え方を提案しました。
地球システムには、自然本来の回復力(レジリエンス)が備わっている。だが、一定以上の負荷がかかると、その回復力は失われ、極地の氷床の融解や野生動物の大量絶滅など急激かつ不可逆的な、破壊的変化を引き起こす可能性がある。これが「臨界点(ティッピング・ポイント)である。もちろん、臨界点を超えてしまうことは、人類にとっても非常に危険である。
人新世の「資本論」 p62
たとえば「野生動物」
数億年にわたり進化してきた野生動物。お互い自然の大きな循環の一部として生きています。人の都合で自然を破壊すると、人には予測できない変化が起きます。
日本にはオオカミがいました。家畜を襲うので人が皆殺しにしました。すると、シカやイノシシが増えました。人が育てた作物を食べ、若木を食べ、冬になると飢えのため木の皮を食べています。
畑にお金をかけて網を張っても、すぐイノシシに破られます。森では、皮や芽を食われた若い木が枯れ、森が育ちません。人の都合でしたことが、人に返ってきたのです。
こういうことが、世界中で起こっています。
臨界点(ティッピングポイント)
ロックストームは9つの項目で限界点を計算しています。その9項目は
- 気候変動
- 新規化学物質
- 成層圏オゾンの破壊
- 大気エアロゾルの負荷
- 海洋酸性化
- 生物地球化学的循環(窒素、リン)
- 淡水利用
- 土地利用変化
- 生物圏の一体化(生態系機能の消失、絶滅の速度)
その中でも、
1.気候変動
6.生物地球科学的循環(窒素、リン)
8.土地利用変化
9.生物圏の一体化(生態系機能の消失、絶滅の速度)
は、「地球の限界の領域内(安全)を超えてしまった」と指摘しています。境界を超えると、急激で不可逆な変化が起きて「以前の状態に戻れなくなる可能性」が高まるんです。
限界を超えると
限界を超えると「こんなことが起きる」と言われています。
気候変動
最近は「天気が極端になった」と思いませんか?
- ゲリラ豪雨
- 猛暑日
- 短くなった春と秋
特に、雨。激しく降ると栄養豊富な土が流され、結果 6.生物地球科学的循環 7.淡水利用 8.土地利用変化 に引っ掛かります。
生物地球化学的循環(窒素、リン)
窒素は空気中にたくさんありますが、問題なのは「液体、個体の窒素」です。
よく知られている窒素酸化物(NOx)。これはNO、NO2、など、窒素と酸素が数個つながった形をしています。空気中にたくさんあると「喘息、光化学スモッグの一因」に。雨に溶けると「酸性雨」ですよ。
このきっかけは、ハーバーとボッシュが「空気中窒素でアンモニア(NH3)を作る方法」を見つけたこと。安い化学肥料をつくり、収量アップ!とても良かったのですが……
そのおかげで、酸性雨などで自然破壊が進み、人間が困っていますよ。つまり、人間の発明が、自然循環を乱しているのです。
リンは「リン鉱石」から作ります。それで「化学肥料」を作るんです。
日本は、食べ物を輸入に頼っています。食べ物には窒素、リンが含まれます。それが、排泄物や廃棄物になって、最終的に川や海に流れ出ます。
今、日本の河川、湖沼、海は富栄養化が進んでいます。
リンが多すぎて、うまく循環できないのです。
一方で、人が排水を処理しすぎて「貧栄養化が進んでいる所」もあります。
瀬戸内きれいになりすぎ
2021年6月4日 きれいになりすぎて弊害も 瀬戸内海の排水規制を転換へ 朝日新聞朝刊 2022/10/27引用
ノリの養殖などに必要な栄養分を増やすため、工場や家庭からの排水規制を緩和する改正瀬戸内海環境保全特別措置法(瀬戸内法)が3日、国会で可決、成立した。これまで汚染物質である栄養塩(窒素、リン)の排出を減らしてきたが、海水がきれいになりすぎて生き物の栄養が不足してきたため、管理しながら流せるよう方針転換する。
これも、人が手を加えたために、うまく循環できなくなった一例です。
土地利用変化
「土壌」とは、岩の分解したものと死んだ動植物が混ざったもの
土 地球最後のナゾ 藤井 一至 光文社新書(2018) p19
という決まりがあります。
火山がたくさんあり雨がよく降る日本では、川によって岩石が細かくなり植物がよく育つので、新しい土壌ができる条件が整っています。
しかし、アフリカなどは火山活動も活発ではなく、雨もあまり降らないので、新しい土壌がなかなかできません。その上、風が吹くと少ない土壌も飛ばされてしまいます。
緑が多く生命力あふれるジャングル。そこの土はオキシソルと呼ばれる痩せた土です。その上にちょっとだけ植物が腐った栄養豊富な土壌が乗っています。それがジャングルで循環しているのです。
だから、切り開いても栄養がなくなってすぐ使えなくなります。使えないから、次のジャングルを燃やして作物を育てて……そうしてジャングルがなくなります。
ジャングルは、酸素を作ってくれています。人間は、そのジャングルを減らして……って、大丈夫?
これって「時間的転嫁」ですよ。
「以前の状態に戻れない変化」……怖くないですか?
生物圏の一体化(生態系機能の消失、絶滅の速度)
1960年代以降、世界中の人々がみな同じようなものを食べ始めました。どこでも同じ味のハンバーガー、清涼飲料水、スナック類。
世界には食用可能な作物が約7000種類あるが、私たちが口にするものの95パーセントは、わずか30種類の作物だけで出来ている。
「食べる」が変わる 「食べる」を変える ビー・ウィルソン 原書房(2020)p47
メキシコでは「遺伝子組み換えとうもろこし」が流入して、遺伝的多様性の脅威になっています。
日本でも昔は「固定種」がたくさんあったのですが、
江戸時代には約二百種類と言われるほど、各地に多様な大根があった。
タネが危ない 野口 勲 日本経済出版社(2011) p76
今では「一代雑種(F1)のタネ」ばかり。
地球全体で「単一作物栽培」をすると、ちょっとした気候の変化で一つの病気が大流行し、壊滅的打撃を受けます。
「ブラジルのコーヒー豆」と同じことが起きます。
人間(資本主義)が自分の都合だけを考え、身勝手なことを行ったため、一部の循環が機能しなくなり、自分の首を絞めているのです。
では、どうすれば?
「限界」を超えないように、私たちには何ができるのでしょう。自分で考えるのが一番なのですが、斎藤幸平さんが読み解いた「マルクスの答え」を見てみますか?
こんな考え方も、ありますよ。
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