産業革命以降、
- 工場を持っている人
- 石炭などの資源を持っている人
- 土地を持っている人
と、
- 持っていない人
という階層ができて、その間に「資産の格差」ができました。
この動きを「資本主義」とよび、分かりやすく(??)説明したのがマルクスで、まとめた本が「資本論」です。

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さらにその「資本論」を、マルクスのメモなどを参考に、さらに分かりやすく読み解いたのが『人新世の「資本論」』。
そして、ココでは「大企業」が
- 弱い立場の人、国
- 自然
- 将来
から様々なモノを奪い取り、金儲けする方法「3つの転嫁」
- 技術的転嫁
- 空間的転嫁
- 時間的転嫁
を、ご紹介します。
このしくみが分かれば、「大企業のたくらみ」が見破れるようになりますよ!
3つの「転嫁」
資本家は労働者から、労働力を搾取します。
マルクスはこう強調していた。資本主義は自らの矛盾を別のところへ転嫁し、不可視化する。だが、その転嫁によって、さらに矛盾が深まっていく泥沼化の惨状が必然的に起きるであろうと。
人新世の「資本論」p42
奪い取った事が分からないように、あらゆる手段を使って見えなくします。しかし、それがばれた時には、とんでもないことになっているのです……
ああ、なんだか聞いたことがありますね。この手の失敗。
- 「明日から」と生活習慣を改善しないで、病気になる
- 「お金を貯めないと」と思いつつ、貯金ができない
将来困りますよね。それを人(世界的大企業や先進国に住む私たち)が地球規模で行っているのです。
その「転嫁」の方法を、マルクスは「3つ」指摘しています。
技術的転嫁-生態系の攪乱
たとえば、人工的に空気中窒素を個体にして肥料にします(化学肥料)。その肥料をたくさん使うと、収量が増えます。
窒素を肥料にするために、エネルギーをたくさん使います。さらに、窒素以外の成分は、都市部に出荷される作物とともにどんどん奪われていきます。
土壌中の栄養がかたよるので、畑の微生物が減ります。
すると土の構造が変わって(団粒構造が崩壊)水を保てなくなり(保水力低下)雨が降ると土が流れてしまいます(表土流出)。この悪循環がぐるぐる回って、あっという間に豊かな農地が、やせた土地になってしまいます。
これが、マルクス時代の「技術的転嫁」。自然から搾取して、直面している問題を先送りしている状態です。
現代の技術的転嫁「遺伝子組み換え」「ゲノム編集」「RNA農薬」

現代では、別な「技術的転嫁」が行われています。
平成9年に青紫色のカーネーションが、平成21年に青いバラが発売されました。これは「遺伝子組み換え植物」です。
現在日本では遺伝子組み換え作物は、畑で育てる為には許可が必要です(2021年5月現在)。「気持ち悪い」と消費者に避けらるので、栽培されないという側面もあります。
遺伝子工学(専門的には「組み換えDNA技術」。「生物工学」「遺伝子スプライシング」とも呼ばれる)は、それまで不可能だったやり方で、DNAの断片を動かしたり、挿入したり、あるいは並べ替えたりすることによって、生きている生物の遺伝子を再構成する新しい強力な手段の組み合わせから成り立っている。
遺伝子組み換えのねじ曲げられた真実 スティーブン・M・ドルーカー 日経BP社(2016)p25

「遺伝子組換え」だけでも問題なのに、最近では「ゲノム編集」という技術も出てきましたよ。
コレは、「技術的転嫁」の典型例だと思うんですよね~。
遺伝子組み換え作物自体が問題
遺伝子組み換えとは、「生物の設計図(ゲノム)に他生物の遺伝子を組み込むこと」です。
- 特定の除草剤を浴びても枯れない遺伝子
- 害虫が食べたら死ぬ毒素の遺伝子
こんな遺伝子が組み込まれます。
けどね、遺伝子は生き物の「設計図」ですよ。
ヒトの遺伝子の数は、線虫とほぼ同じ、2万1000個だった。ヒトゲノムのサイズは植物のイネの半分しかなく、3万1000個の遺伝子を有するミジンコにもはるかに及ばなかった。線虫やイネやミジンコには話す能力も創造力も知的思考力もないというのに。
あなたの体は9割が細菌 A・コリン 河出文庫 (2020)p22

詳しくは、コチラ
「遺伝子が多ければ情報が多い」というわけではありません。4つの塩基配列、という意味ではとても簡単な作りですが、その相互作用はまさしく神業。人間が設計したのではない遺伝子を、勝手にいじって大丈夫?
また、「虫が死ぬ遺伝子」を組み込まれた作物って「化学農薬」ですよね。人が食べて大丈夫?
大腸を中心にした消化管内には、この二つの菌(※サイト管理者注:大腸菌とビフィズス菌です)以外にも、多くの菌が常在している。成人になると少ない人でも60種類、多い人で100種類、100兆個いるといわれている。
人体常在菌のはなし 青木 皐 集英社新書(2004)p47
常在菌がいるのは、腸内だけではない。口腔内に100億個、皮膚には1兆個いる。
人体常在菌のはなし 青木 皐 集英社新書(2004)p47

人は微生物と生きています。腸内細菌は免疫に関係し、短鎖脂肪酸やビタミンをつくり、私たちの健康を維持してくれています。こういう微生物に影響はないのでしょうか。
- 虫が食べたら死にます
- この除草剤をまけば、作物以外は全部枯れます
- 手間がかからず収量増加!
かもしれません。けれどもそれは、科学技術を使って問題点を先送りしているだけではないですか?それこそ、技術的転嫁の典型的な一例だと私は思うのです。
組み合わせる農薬が問題

さらに、ここで使われる除草剤。発がん性があると言われています。
アメリカに「この除草剤を使ってがんになったのは、発がん性があるよ、という注意書きがなかったからだ!」と訴えた人がいました。
2019年5月、米カリフォルニア州アラメダ郡高等裁判所の陪審団は、この訴えを認め、総額20億ドル余り(1ドル100円として2000億円)をこの夫婦に支払うよう製造会社に命じました。
2019年8月にバイエルは80億㌦の賠償金を支払う提案をおこない、和解への動きを示した。和解では、バイエルが現在のラウンドアップ訴訟を解決するために、88億ドルから96億ドル支払うことを宣言し、今後の訴えにそなえ追加で12億5000万ドルを用意したとのべた。和解により約9万5000件の訴訟が終結するとしている。だが、今後も約2万5000件の訴訟が未決着のまま残る。
長州新聞 バイエル(モンサント)が10万件の訴訟に1兆円で和解 ラウンドアップに発がん性 より 2021/8/29引用
この除草剤が、使われ始めて50年。それで健康被害が分かってきたのです。あまりに訴えられるので、この会社はアメリカ一般家庭市場からの撤退を決めました。
これからもっと健康被害が明らかになるかもしれません。なぜなら、我々に影響がなくても、こども、孫世代に影響が出るかもしれないからです。
そういうとき、私はこの文章を思い出すのです。
ところが、その原因を作った企業は、被害が出ても因果関係が証明されないと言い張って補償をしない。もちろん、補償をしたところで、環境問題の場合は、元通りにならないことも多い。
人新世の「資本論」
技術的転嫁は問題を解決しないのだ。むしろ、技術の濫用によって、矛盾は深まっていくばかりなのである。p46
それでも「遺伝子組み換え」「ゲノム編集」食べたいですか?
遺伝子組み換え作物は、商品になって既に流通している

「遺伝子組み換え作物」が入っている食品。スーパーやコンビニで普通に買えるんですよ。
- 輸入トウモロコシ
- 輸入なたね
- 輸入砂糖
- 輸入大豆
コレは大体、遺伝子組み換え。遺伝子組み換えでない場合は「遺伝子組み換えではない」との記載がある場合も。それだけ貴重なんです。
ちなみに「国内製造」は「国内で製品になりました」という意味。「日本で栽培された」ではありませんよ!
さらに
- 油
- 砂糖
- しょう油
は、生成、分離されていてDNAを含まないので、表示義務がありません。遺伝子組み換えを避けるのは、大変なんです。
空間的転嫁
北米と南米は、大手資本による「空間的転嫁」の標的にされています。
この記事では、「ブラジルからの空間的転嫁」を説明しました。ココでは「メキシコのトウモロコシ」を例に、説明しますね。
メキシコで起こったこと

メキシコの主食は「トウモロコシ」。地域の気候風土に合った「在来種のトウモロコシ」が、たくさんあります。
1994年、アメリカ、カナダとともにメキシコは北米自由貿易協定(NAFTA)を締結。それと同時に、農産物の関税が撤回されました。
すると、「アメリカの大手化学企業」が、「在来種トウモロコシ」のゲノム解析をし、育種登録や応用特許を次々に申請したのです。
原種をもとに新たに作り出され、主流を占めるようになったF1品種(一代限りの品種)や遺伝子組み換えのトウモロコシをメキシコの農家が栽培するには、モンサントやデュポンへロイヤリティー(使用料)を支払わなければならなかった。
売り渡される食の安全 山田正彦 角川新書(2019)p78

1994年から1996年までに、メキシコの穀物価格は48%下落。しかし、NAFTA発行と同時に「消費者価格引き下げのための政府補助金」が廃止されたため、トルティーヤの価格は下がりませんでした。
その後協定は、2018年に「アメリカ・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」と名称が変更。2021年5月、オンラインでこの協定の自由貿易委員会が開かれました。
遺伝子組み換え作物の輸入規制では、2020年末にメキシコ政府が出した政令に基づき、遺伝子組み換えトウモロコシの輸入を2024年1月末までに禁止する措置を取ることが米国のトウモロコシ農家などから問題視されている。
ジェトロ ビジネス短観 2021年5月21日 https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/05/0835b9eb7569262b.html
アメリカの利益だけ見ると、こういう意見が出ます。
- 種の多様性維持
- 地産地消
- 有機農業の推進
- 気候危機対策
こういうことは、無視されます。
外国に転嫁できなければ国内で転嫁
他国に転嫁できない場合は、「国内の弱いところに転嫁」します。2020年からのコロナ禍で問題になっている非正規雇用。正社員より法律で守られていません。

パート、アルバイトは正社員を守るために真っ先に首を切られます。ただ、直接雇用なので2020年4月の一斉休業時には、いくらかのお金をもらいながら自宅待機できた方もいらっしゃいました。
派遣社員の場合は派遣会社に聞いてくださいというのが派遣先企業の言い分です。登録している派遣会社に確認すると派遣先企業に確認してくださいと言われます。たらいまわしにされるのです。

テレワークでも格差があります。
時間的転嫁
これは読んで字のごとく「将来に問題を先送りにする」という事。
「大洪水よ、わが亡き後に来たれ!」
「資本論」マルクス
「利用可能な化学燃料が減少している事だけが私たちの直面している限界ではない。
ディープエコノミー 生命を育む経済へ ビル・マッキベン 英治出版(2008) p30
実際、それすら最重要問題ですらない。
石油が亡くなる前に、地球がなくなってしまうのだから」

ディープエコノミー 生命を育む経済へ [ ビル・マッキベン ]
「あなたたちが科学に耳を傾けないのは、これまでの暮らし方を続けられる解決策しか興味がないからです。そんな答えはもうありません。
グレタ・トゥーンベリ COP24でのスピーチ
あなたたち大人が、まだ間に合うときに行動しなかったからです。」
切羽詰まってからじゃ、遅すぎます。
では、どうすれば?
「3つの転嫁」どれもダメなんです。
では、私たちには何ができるのでしょう。自分で考えるのが一番ですよ。けどね、斎藤幸平さんが読み解いた「マルクスの答え」を見てみますか?
こういう考えも、あるんです。
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