「モモ」で有名なミヒャエル・エンデ。
エンデは「モモ」のほかにも、いろいろ作品を残しています。
たとえば1993年、亡くなる2年前に「ハーメルンの死の舞踏」というオペラを書きました。
これらの作品に共通することがあります。それは「お金」「希望」。
エンデが「お金」と「希望」についてどう考えていたのか、作品を見てもぼんやりとしかわかりません。しかし、それがずばり書かれた本があります。「エンデの遺言」です。
ここでは、エンデが考えていた「お金」の根本的な問題、その問題の解決方法をご紹介します。コレを読めば、エンデが「モモ」に込めた意味をはっきり理解することができますよ。
エンデが心配していたこと
エンデは予言しました。
今日のシステムの犠牲者は、第三世界の人びとと自然にほかなりません。このシステムが自ら機能するために、今後もそれらの人びとと自然は容赦なく搾取され続けるでしょう
エンデの遺言「根源からお金を問うこと」河邑厚徳+グループ現代 著 NHK出版 p2
これは、1994年にエンデが語った言葉です。
2021年、イギリスのグラスゴーでCOP26が開催されました。
ここでは、自然とグローバルサウスが大企業や先進国によって搾取されていること。その結果、気候変動が起きて、グローバルサウスの人たち、将来を担う子どもたちが損害を受けていることが話題になりました。
25年以上前にエンデが心配していたことが、だれの目から見ても現実になったのです。
なぜこうなったのか?エンデが考える理由
エンデはいつも「すでに第三次世界大戦は始まっている」と警告していました。
それは領土や宗教をめぐるものではなく、われわれの子孫を破滅に導く時間の戦争です
エンデの遺言「根源からお金を問うこと」河邑厚徳+グループ現代 著 NHK出版 p16
その原因が、「資本主義」「現代の金融システム」にあるのでは?と考えていました。
では、具体的に、「資本主義」「現代の金融システム」の何が問題だと思っていたのでしょうか。
お金には二種類あることを自覚すると…
エンデは、お金には2種類あると考えていました。
重要なポイントは、パン屋でパンを買う購入代金としてのお金と、株式取引所で扱われる資本としてのお金は、二つの異なる種類のお金であるという認識です。
エンデの遺言「根源からお金を問うこと」河邑厚徳+グループ現代 著 NHK出版 p28
つまり
- 増えないお金(もしくは、減るお金):パンを買う代金
- 増えるお金:資本
この二つを具体的に説明します。
増えないお金
パンを買う代金は、パンと等価交換されます。増えません。
パン屋さんはそのお金で小麦を買い、パンを作ります。パンが売れ残って腐ると、資産が減ります。つまり、お金が減るのです。
パンを買った農民は、パンを食べて小麦を栽培します。小麦がネズミに食われたり、カビたりすれば、資産が減ります。つまり、お金が減るのです。
本来、お金はモノを円滑に交換する手段として生まれました。ですから、減るのが本来の姿なのです。
増えるお金
ところが、今では投資など「増えるお金」が主流です。
私が読んだあらゆる経済理論も、原料はそれが作業過程に入って初めて経済的要因とみなされます。換言すると、地中に眠る原油はまだ経済的要因とみなされないわけです。熱帯雨林は、それだけではまだ経済的要因ではありません。伐採され、製材されて初めて経済的要因となります。
エンデの遺言「根源からお金を問うこと」河邑厚徳+グループ現代 著 NHK出版 p28
つまり、お金として計算されていない自然をタダで持ってきて、価値あるものにして売ると、金もうけができるのです。
それを資本として投資。利子をもらいます。それがぐるぐる回り、お金が自動的に増えるのです。
短期的にはお金が増えてうれしいかもしれません。けれども、長期的にみると、どうなのでしょう…。
歴史から「お金」を考えると…
また、別の視点から「お金」を考えてみましょう。
お金は、等価交換の「増えないお金」の時代が圧倒的に長く、資本主義経済の「増えないお金」が誕生したのは、ほんの最近のことです。
たとえば「魚」。
中国の洞庭湖では、たくさんの漁師が魚を取って暮らしていました。
ところが、冷凍技術が発達。魚を長期間保存できるようになると、たくさん魚を取って売り、大金持ちになる人が現れました。
みんな、お金が欲しくて、必要以上の魚を取ります。そこに大型エンジンをつけた船を売りに来る業者、ローンを組ませる銀行…漁師はローンを組んで漁船を買い、魚を取りまくります。
とれる魚のサイズは小さくなり、量も減りますが、ローン返済のために魚を取り続けます。
そして、最後には電気ショックで辺り一帯の魚を一網打尽。すべての魚を取りつくしてしまったのです。
この湖では、10年間の禁漁が決まりました。漁師は全員廃業です。
つまり、「みんな取っているから」「今までは大丈夫だったから」という正常性バイアスがはたらき、
事実を見誤ったのです。
結局もうかったのは業者と銀行。「踊らされた漁師」と「搾取された自然」は、被害者とも言えます。
今回、10年の禁漁すれば、魚は戻ってくるかもしれません。ただ、これが地球規模で起きると、人間は逃げる場所がありません。
最近、やたらと「宇宙に移住する話」が出てきますよね。
事実を知った一部の富裕層が、本気で火星に逃げようと思っているのかもしれません。
それぐらい、「資本主義経済が地球を壊している」というのが事実なのです。この事実を正面からとらえることが、根本的解決には欠かせません。
根本的な考えを変えるために
一部の富裕層は、地球の危機を正確にとらえているかもしれません。
ただ、それをマスコミを通じて大々的に報じると、世界がパニックになるでしょう。正常性バイアスがはたらいている人々にとっては、過去に例のない、想像できない問題は「ありえないコト」ですからね。
エンデは、地球の将来を憂いていました。そして、それを正確に伝えるにはどうしたらよいか、深く考えた結果、事実に裏付けされた「ファンタジー」を書いたのです。
未来を想定し、何が起きてくるのかを予言的に直視しなければならない、と語っています。それは、人間に与えられたイマジネーションの能力に依らなければならないということでもあります。問題解決を過去からではなく、未来から考える。それがエンデの依って立つファンタジーの力なのです。
エンデの遺言「根源からお金を問うこと」河邑厚徳+グループ現代 著 NHK出版 p17
それでは、エンデはお金に関してどんな考えを持っていたのでしょうか。別な視点で見てみましょう。
お金の機能を分類しよう
お金は、「機能」だけに注目すると、以下のようにも分けられます。
- モノや労働力のやり取りに使うお金:限度がある 循環する 実体がある
- 財産や資産としてのお金:限度がある あまり循環しない 実体がある
- 商品としてのお金:限度がない 循環しない 実体がない
1と2が従来のお金。そして、3が近年生まれた概念の「お金」です。
つまり、「3.商品としてのお金」が、「格差」「極端な貧困」「気候危機」など近年の問題の根源なのです。
では、「3.商品としてのお金」の問題点を洗い出してみましょう。
限度がないのはおかしい
地球資源には限りがあります。それなのに、お金だけ増え続けるのは変だと思いませんか?
人が増え続けるから、科学技術で食糧問題解決!と言う企業があります。ただ、技術開発には大量の石油を使います。その、石油利用が気候危機を招いているのに解決って、おかしいと思いませんか?
「経済成長が必要」と言われています。けれども、永久に成長し続けるのって、変だと思いませんか?
変だと思えないのは、正常性バイアスがかかっているからだと思いませんか?問題を転嫁しているだけだと思いませんか?
地球上で、限度がないのは矛盾しています。その矛盾のせいで、貧困が広がり、気候危機を招いています。
マスコミが報道しなくても、この事実を自分事として受け止める必要があるのです。
循環しない、腐らないのはおかしい
地球上のモノは、すべて循環しています。地下資源は循環していないように見えるかもしれませんが、それは短期的に見た場合。何億年という期間で見れば、ゆっくり循環しています。
モノの循環には、本来の速さ、タイミングがあります。人間の都合でそれを無視すると、不都合が生じるのです。
いくつか例を出しますね。
- セミの羽化:助けようとして殻を取ってしまうと、セミは死にます。
- 野菜の促成栽培:見た目は立派ですが、栄養価は旬の野菜より劣ります。
- 子どもの成長:成長に見合わない教育をすると、子どもが本来の能力を発揮できません。
自然に人間の都合を押し付けて循環を乱すのは、巨大ブーメランを放っているのと同じです。
結局、人間の首を絞めるのです。
「腐る」「減る」のは、循環と一緒。つまり、腐らない、減らないお金はおかしいのです。そこら辺のことを、詳しく教えてくれる本があります。
この本に「エンデの遺言」が出てきますよ。「腐る経済」は、エンデの考えに強く共鳴するのです。
実体がないのはおかしい
「お金」を物質としてみたら、変だと思いませんか?
お金って、硬い紙ですよ。小さすぎて、硬すぎて、使い道がありません。それなのに「価値がある」のは、国民が日本銀行や他国政府を「信用」して価値を認めているからです。
それが信用できない存在だったら?
そして、「電子通貨」は?仕組みが全く分からないので、私は買っていません。そんな「実体がない」のはおかしいと思うからです。
正常性バイアスを解除するために、エンデはファンタジーを使いました。そして、最後に必ず「希望」を描きました。
そうやって、私たちの創造力を高め、正しい道を見出す魔法をかけてくれたのです。
私たちに出来る事
何気なく使っているモノ。それを「ゼロベース」で考え直しませんか?
一例をご紹介しますね。
気候変動は自分事と理解する
正常性バイアスを解いてください。気候危機は私たちみんなの問題です。ただ「二酸化炭素」だけが悪いのでしょうか?
自分で調べ、考え、意見を持つことが大切です。
行動の意味を考える
私たちの行動の意味を、ゼロベースで考える必要があります。
なぜワクチンを打つのですか?みんなが打つからですか?政府が打てというからですか?それを「正常性バイアス」というのです。
まずは、そこから抜け出ましょう。自分の行動の意味を、ゼロベースで考え直しましょう。
「おカネ」から「持続可能」にモノサシを変える
なぜこの米を買うのですか?
「安いから」を「持続可能な農業をする農家が作ったから」に変えませんか?
そして可能なら、その田んぼを実際見て、どれだけ苦労して作られた米なのか、確認しませんか?
そうすると、「米」というお金と交換するモノが、想いがこもった「食べ物」に変わります。お金では買えない付加価値が付くのです。
お金で買うものすべてを「おカネ」から「持続可能」に変えると、友人、通うお店が「持続可能」に変わります。そして、自分自身も心から健康になれるのです。
本当ですよ。私が実感しています。
自分の周りが持続可能になると、大企業の製品と縁が切れました。そして、お金が貯まったのです。
今まで、どれだけ大企業にみついでいたのか…よく分かりました。
プラスチック製品と電気はとても仲良し。脱プラするためには、家電製品を使わないのが近道でした。これから石油に頼れなくなります。薪ストーブを使うのなら、そこで料理をすれば一石二鳥!ここではガスを使って加熱調理する方法をご紹介します。
企業の「カンタン」「便利」に踊らされるのをやめれば、もっと楽に生活できますよ。そんなことに気づかせてくれた本が、「エンデの遺言」でした。
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