海に漂うマイクロプラスチック。網ですくって「これはプラスチックです」と分かるわけではありません。一つ一つ人が機械にかけて分析しているのです!
ココの知識はこの本から頂きました。
この本です。興味のある方は一読をお勧めします
では、その「地道な作業」をご紹介しますよ。この作業をしているつもりで、想像しながら読んでみてください。
小さいプラスチックを集める
海からプラスチックを集める方法は、この2つ。
- 海面近くは曳網採取:海面近くに浮いているモノをとる網があります。
- 深さ10m以下の採取は:方法が確立されていません。
環境省が2019年5月に「漂流マイクロプラスチックのモニタリング手法調和ガイドライン」を発表しました。
http://www.env.go.jp/water/post_76.html こちらが環境省のHP
ガイドラインの曳網方法の概要図 PDF 英語版の下に日本語版があります。
「プラスチックは問題だ」と考える世界中の人たちが、同じ条件でプラスチックを集めて、同じ方法で情報発信しています。
けど、集まったのはプラスチックだけではない
海で集めたモノをきれいに洗って仕分けをします。ネットの網目は「0.3ミリ」。それより大きいモノしか収集できません。
マイクロプラスチックを集めたい場合は、5mmのふるいにかけて、ふるいの下に落ちたものを一つ一つ調べます。海藻に見えても、石に見えても、実はプラスチックかもしれないからです。
最初に紹介した本「海洋プラスチックごみ問題の真実」の82ページに、分別作業をしている写真があります。
これを見ると、4段階に網目が細かくなっていくふるいが。分析者の前には、たぶん真空ポンプにつながった「ろ過装置」が見えます。恐らく手順としては
- 海面でモノを集塵ネットで集める
- 集塵ネット内側をきれいに洗って、水の中に集める
- 水ごとろ過する
- ろ紙の上に残っているモノを調べる
という感じだと思います。これだけでも「地道な作業」ですよね。
けれども、このあとが「もっと地道な作業」なのです……
大きさで分けたら、プラスチックを探し出す
5mm以下のモノを集めてから、プラスチックかどうかを調べる作業に入ります。
よほど小さな粒は、生物や鉱物の破片なのか、プラスチックなのか、肉眼では判断できません。そこで、フーリエ変換赤外分光光度計という分析機器を使って、素材判定を行います。
海洋プラスチックごみ問題の真実 磯部篤彦(2020)p83
この「フーリエ変換赤外分光光度計」
コレにかけると
- プラスチックかどうか
- プラスチックの種類
これがすぐ分かる「便利な装置」のですが、測定方法が……
- 直径2mmぐらいの平らな場所に測定したいモノを置く
- 上からぎゅーーっと押す。モノを平らな場所に密着させる
- 赤外線を当てる
このような感じで、すべての破片を測定し、画像を保存するんですよ。ひとつだけならあっという間ですが、これを延々繰り返します。
磯辺先生の研究室ではこの作業を繰り返し、17万粒を超えるマイクロプラスチックを判定したそうです。「写真撮影した分だけで17万」ということは、装置で測定した粒はもっとあるということでは……想像を絶します。
調べるのにはお金がかかる
この研究にはとてもお金がかかっています。
モノを集めるためには「船」を出さなければいけません。集まったモノを分別、判定するのも膨大な手間ですから、「人件費」がかかります。
「 フーリエ変換赤外分光光度計」も高額です。「カメラが装着できる顕微鏡」「データを保管するパソコン」、これらの「保守点検」…それ以外にもいろいろあると思います。
とにかく、お金がかかるのです!
そして、マイクロプラスチックは世界的な問題なので、世界中で同じような事が行われ、みんなで話し合いをしています。
集まるのにも、お金がかかります。
今、やっと「プラスチックがあちこちにある」という事が分かりました。ここが出発点に過ぎないのです。
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