資本主義は
- 弱いものから奪う
- 自然から奪う
- 将来から奪う
で成り立っています。
ただ、これって「巨大ブーメラン」だと思いませんか?
科学技術も「より複雑に」「難しく」なっていますよ。
よく分からないものに、私たちの将来をゆだねて大丈夫なのでしょうか。
『人新世の「資本論」』の著者斎藤幸平さんは、マルクスの膨大な「メモ」「ノート」を読み解くうち「コモン」に辿り着きました。ただ、「コモン」は新しい考え方ですから、そこを詳しく詳しくご紹介しますね!
脱成長コミュニズム流 生き方改革
「コモン」とは「共有益」。「自然はみんなで管理して、利益を受けましょう」という考えです。
たとえば、
- 働き方
- 豊かさ
- 科学技術
この「捉え方」「使い方」を、こんな風に考え直す必要がありますよ。
「働く」を考え直す
資本主義の基本に「労働疎外」があります。
資本家は労働者を効率良く働かせるために、一連の作業をぶつ切りにして単純化します。繰り返し同じことをしたほうが数多くこなせる、つまり効率が良くなるのです。
そうすると、「モノを作り出す」という創造的な作業が、工夫しようのない単純作業になります。働く喜びから離れてしまうのです。
けれども、そうじゃない生き方もあるんですよ。
「別に生きるだけなら、必ずお金が要るってわけじゃない」んです。それなのに、企業の仕掛けにのせられて、「お金を使う人生」を歩かされていませんか?
「豊か」を考え直す
「山奥ニート」は、毎日楽しく暮らしています。しかし、資本家はそれだと困ります。商品が売れないからです。
人々は生活していた土地から締め出され、生活手段を奪われた。そこに追い打ちをかけるように、それまでの採取生活は、不法侵入・窃盗という犯罪行為になったのである。
人新世の「資本論」 斎藤幸平著 集英社新書 p238
共同管理していたものを「個人のモノ」にしました。山で芝刈り、川に洗濯に行って桃を拾うと、「不法侵入」「窃盗」になってしまいます。
そうやって、人々を自然から切り離し、「大量消費はいいこと」「金持ちはすごい」と信じ込ませ、農民を「労働者」「消費者」にしました。
一方、生活手段を失った人々は、多くは都市に流れ、賃金労働者として働くように強いられた。低い賃金のため、子供を学校に行かせることもままならず、家族全員が必死に働いた。それでも、高価な肉や野菜は手に入らない。食材の品質は低下し、入手できる品の種類も減っていく。時間も金もないので、伝統的な料理レシピは役立たずのものとなり、ジャガイモをただゆでたり、焼いたりする料理ばかりになっていったというわけだ。生活の質は明らかに落ちたのである。
人新世の「資本論」 斎藤幸平著 集英社新書 p239
今だと
- ファストフード
- スナック菓子
- 温めるだけの食品
でしょうか。労働者、消費者として「資本家から搾取されつづける弱者」を作ったのです。
「科学技術」を考え直す
斎藤さんはフランスのマルクス主義者アンドレ・ゴルツの論考を示しています。
まず、ゴルツは、資本主義における技術発展の危険性をはっきりと指摘している。ゴルツによれば、専門家に任せるだけの生産力至上主義は、最終的には、民主主義の否定につながり、「政治と近代の否定」になる。
人新世の「資本論」斎藤幸平著 集英社新書 p 226
「一握りの人しか知らない技術は危険」という事です。
その上で、生産力至上主義の危険性を避けるためには、「開放的技術」と「閉鎖的技術」の区別が重要である、とゴルツは述べた。
人新世の「資本論」 斎藤幸平著 集英社新書 p 226
「閉鎖的技術」は、一部の人しか詳細を知りません。それを良い事に、資本家は「革新的なモノができます!」という幻を消費者にみせて、さらに財産、体力などを奪い、自然破壊を進めます。
「閉鎖的技術による転嫁」。これを進める資本家は、消費者が止めるしかないのです。
私たちは、もう一度、別の社会を思い描けるようになるために、資本の包摂に抗い、想像力を取り戻さなくてはならない。マルクスの「脱成長コミュニズム」はそのような想像力の源泉なのである。
人新世の「資本論」 斎藤幸平著 集英社新書 p230
そのために、「生きるために本当に必要なモノは、何だろう」と、一人ひとりが心底考える時が、今なんです。
「価値」と「利用価値」を見分ける
「価値」とは貨幣で測ることができるもの。「利用価値」とは生きるために絶対必要な水、空気のようなもののことです。
たとえば水には「利用価値」があります。生きるために絶対必要だからです。しかし、ペットボトル水のように商品になると「価値」がでます。資本家はそこに目を付けます。
水道が民営化されると、企業が利益を上げることが目的となるため、システム維持に最低限必要な分を超えて水道料金が値上げされる。
人新世の「資本論」 斎藤幸平著 集英社新書 p248
日本も2018年に水道法が改正されたので、他人事ではありません。
水道水の質が下がることもあります。そうすると”〇〇の水”などと希少価値をつけて、「価値」を高めた商品を売る資本家が現れます。
けれども、生きるために必要なのは「利用価値」です。水は川に流れています。井戸を掘れば出てきます。そういう「価値の本質」を、見極めなければいけませんよ。
地域・地球を、持続可能な「コモン」として資本の商品化から取り戻す
そこで、「自然は資本家が独占するのではなく、みんなで共有しよう」という考えが生まれたのです。
〈コモン〉とは、社会的に人々に共有され、管理されるべき富のことを指す。
人新世の「資本論」 斎藤幸平著 集英社新書 p141
生きるために必要なものは自分で作りましょう。大企業から買うことは、搾取に協力すること。頑張って地域を盛り上げている生産者のものを探して、購入することで応援しましょう。
余計なモノを作ると疲れるし、それがもとで争いが起きます。大量生産、大量消費はやめましょう。
生きるために必要なモノ、つまり「利用価値」のある「コモン」はみんなで管理しましょう。
ただ「100年前に戻ろう」ではないですよ。
〈コモン〉のポイントは、人々が生産手段を自律的・水平的に共同管理するという点である。
人新世の「資本論」 斎藤幸平著 集英社新書 p258
生産者たちが、自然科学を使って、自然との物質代謝を「合理的に規制」することを、マルクスはあくまでも、求めていたのである。
人新世の「資本論」 斎藤幸平著 集英社新書 p 226
「利用価値」があるモノはみんなで管理しよう。「開放的技術」も「コモン」として共同で管理しようと言っているのです。
これを「民営化」をもじって、市民の手による「〈市民〉営化」と呼ぼう。
人新世の「資本論」斎藤幸平著 集英社新書 p259
地域・地球を、持続可能な〈コモン〉として資本の商品化から取り戻す= 脱成長コミュニズム
という事です。
実践している「人」「国」
こんな考えを、実践している人、国があるってご存知ですか?
この記事で紹介している本を読んで、自分の暮らしをゼロベースで見直してみませんか?
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