「食糧危機」「気候変動」が叫ばれていますよね。
その対策として「SDG’s」「カーボンオフセット」「4R」などが流行していますが……。よーく見ると、これが「大企業の金儲け」に使われていませんか?
「そんな事ない!」と怒られそうですね。ただ、見方を変えると、いろんな思惑が透けて見えるんですよ~。
今回紹介するのは、見方を変えてくれる本「土を育てる」
「小さな変化を生み出したいなら、やり方を変えればいい。大きな変化を生み出したいなら、見方を変えなければ」
土を育てる ゲイブ・ブラウン著 NHK出版 p40
ゲイブさんは、破産の際まで追い詰められ、一般的な農業(慣行農業)を根本的に見直した結果
- 収益爆上げ
- 補助金申請ゼロ
- 子どもが後継者になる
を実現しました。
私たちも、この本から「見方の変え方」を教わり、環境や食の事実を知り、生活を「ゼロベース」で見直しませんか?
きっと、ゲイブさんみたいに、生きるのが楽しくなりますよ!
ヒントは「自然に目を向ける」
日本の慣行農業は
- 耕す
- 化学肥料を入れる
- 農薬をまく
- 収穫物を、根こそぎ持ちだす
米国では、そこに「遺伝子組み換え種子&セットの農薬」が入ります。ただ、これをすると表土がむき出しになり、雨風でカンタンになくなるんです。
たとえば人間が「皮を肉からはがして顔を洗ったら、皮がなくなる」……大変だと思いませんか?
この表現、決して大げさではありません。栄養があり、植物が根を張るのが「表土」。それがなくなったら、ヒョロヒョロの作物しか育ちません。
自然と向き合わざるを得ない状況に
ゲイブさんは4年間「大干ばつ」と「ひょう被害」に遭い、お金がスッカラカンになくなりました。ただ、なくなったからこそ「お金がなくても、できる事はないか?」と、必死に勉強。
壊滅的な数年間に見舞われつつも、私は土壌に関する本を読みあさった。
土を育てる ゲイブ・ブラウン著 NHK出版 p38
そのうえで、土地の自然風土を観察。たどり着いたのが、次に紹介する「土の5原則」なのです。
「土の5原則」+1
ゲイブさんが提唱する「土の5原則」とは
- 土をかき乱さない
- 土を覆う
- 多様性を高める
- 土のなかに「生きた根」を保つ
- 動物を組み込む
現在では、これに
- 背景の原則(気候風土)に沿う
を加えています。
つまり、「本来の自然を再現しつつ、天の恵みを得る」という「リジェネラティブ農業(環境再生型農業)」に辿り着いたのです。
ゲイブさんは、こう振り返っています。
つくづく、この4年連続の不作は地獄だった。でも、あとになってみれば、これは私の人生に起きた最良の出来事に違いなかった。なにしろ、あの4年があったからこそ、自分は常識の枠を取り払って考えざるをえなかったわけだし、失敗を恐れず、自然に寄り添って仕事する方向に進んでいけたわけだから。
土を育てる ゲイブ・ブラウン著 NHK出版 p42
「ピンチはチャンス」だったんですね~
「土の6原則」がくれたモノ
この「数十億年の時を経て、自然が作り出してきた原則(p15)」に沿った結果
うちでは、肥料や農薬や殺菌剤を運んで撒く必要がない。家畜にワクチンや殺虫剤散布を行う必要もない。地の果てまで走り回って、いちばんいい牛や羊やブタを選ぶ必要もない。雌牛や雌羊の妊娠チェックをする必要もない。冬のあいだ、毎日家畜にエサを運ぶために農機を立ち上げる必要もない。家畜小屋から糞を運び出して、耕作地に撒く時間も必要ない。いや、それを言うならそもそも家畜小屋を修理する時間だっていっさい必要ない。まだまだほかにもあるけれど、イメージはだいたい伝わっただろうか。
土を育てる ゲイブ・ブラウン著 NHK出版 p261
政府や企業が「必要だ」と言っていたものが、こんなに「不要」になったのです。
「心の余裕」「体の余裕」「お金の余裕」
ちなみに、ゲイブさんの農場は「ノースダコタ州」にあります。
ノースダコタ州の緯度は「北緯45度56分」。北海道稚内市の緯度が「北緯45度41分」ですよ。
そこで、作物は
- 化学肥料なし
- 化学農薬なし
- 殺菌剤なし
家畜は
- 年中放牧
- 牛に穀物を与えない
- 抗生物質なし
- 駆虫剤なし
- ホルモン剤なし
- 予防注射なし
これで、全く問題ないそうです。よく考えたら、「野生のエゾシカ」は、年中放牧されていますよね……増えすぎて、問題になっているぐらいです。
「土の6原則」に沿った結果、ゲイブさんは「不要なモノ」を知り、「心の余裕」「体の余裕」「お金の余裕」を得ました。
直接販売できる「商品」と「収益」
「土の6原則」を守ると、いろんな動植物が育ちます。ただ、それを農協や卸業者に持ち込むと、農家の収益が減ります。
アメリカでは通常、消費者が支払ってくれる1ドルのうち、生産者のところに入ってくるのはわずか14セント。でも、残りの86セントがそこにあるというのに、どうして14セントで満足できるはずがあるだろう?
土を育てる ゲイブ・ブラウン著 NHK出版 p135
そこでゲイブさんは、他の生産者や出資者と協力して、食肉販売が可能な解体処理施設を建設。許可を取り「直接販売」を始めました。
ファーマーズマーケットで初めて「直接販売」したところ、予想以上の売れ行きだったそうで。
うれしい応援をたくさんもらい、やっぱり、求められているのは単なる農作物ではなく、「質」という付加価値なのだと実感をあらたにした。
土を育てる ゲイブ・ブラウン著 NHK出版 p137
「残りの86セント全てをつかみ取る」までではないそうですが、新たな雇用も創出し、地域活性化にもつながっていますよ~
客の声で、有機以上の「ブランド」に
ゲイブさんは「直接販売」で「客の声」を拾い上げ、商品に反映させているそうです。その中で「よく聞かれる質問」がコチラ。
農場はどこですか?:95%
誰が見ても分かるように、国道沿いに「笑顔マークの岩」を置いているそうです。
遺伝子組み換えの作物を育てたり、飼料として与えたりしていますか?:80%
後でじっくりご紹介しますが、米国でも「遺伝子組み換え作物」「ラウンドアップ」は避けられています。
あとは、こんな質問を受けるそうです。
抗生物質は使いますか?
抗生物質を与えると、なぜか「体重が増加」するんですよ。
抗生物質を与えるのは、治療のためではなく「太らせるため」ですからね。その結果
- 耐性菌が生じる
- ホルモン剤が残っている肉を食べたら影響が出る
と言われています。実際、
- 花粉症
- Ⅰ型糖尿病
- 多発性硬化症
- 自閉症
- アトピー性皮膚炎
- ぜん息
- アレルギー
こういう「最近増えた病気」に、抗生物質が関与しているのでは?と言われています。
アメリカの消費者は、そういう視点で質問しているのだと思いますよ。
ホルモン剤は使いますか?
日本ではあまり話題になりませんが、「ポジラック」入りの乳製品。アメリカでは問題になっています。
あと、太らすためのホルモン剤「17-βエストラジオール」。これも「環境ホルモン」だとして、EUでは「使用した肉は、輸入禁止」なんですよ。
日本では輸入OK。市販されても「ホルモン剤使用」の表示すらありません。
家畜はどんな環境で育てていますか?
卵を産むニワトリの飼い方には「平飼い」「ケージ飼い」がありまして、
日本では、圧倒的に「ケージ飼い」が多数派です。
ゲイブさん家の卵はもちろん「平飼い」。輪作に組み込まれていて、収穫が終わった畑で、残っている野菜や葉っぱをキレイに食べてもらうとのこと。
彼らの落とし物が、これまた土の上に見事な肥料の層をつくる。
土を育てる ゲイブ・ブラウン著 NHK出版 p96
ちなみに、ゲイブさんは「有機認証」を取っていません。あのマーク、維持管理に毎年ウン十万円かかるんですよ!
だから「消費者との信頼関係」があれば不要→「商品を低価格」→「消費者が喜ぶ」……いい循環ですね~
「遺伝子組み換え」「食品添加物」は、米国でも嫌われている
「よく聞かれる質問」で分かる通り、消費者は「原材料」を気にしています。遺伝子組み換え作物も、避ける人が多いんですよ。
アメリカの一般家庭市場から撤退
日本では気軽に買える「ラウンドアップ」。実は、2023年までに「アメリカの一般家庭市場から撤退」って、知っていますか?
これは、発売元のバイエル(2018年にモンサントを買収)が、「訴訟に負けまくったので、一般家庭には別成分のを売る」と決めたから。ただ、それが守られなくて「新たな問題」になっていますけどね~
これ、日本で報道されていますか?
アメリカでも避けられる「アミノ酸等」
この他にも、ゲイブさん家の食品は
「アミノ酸等の調味料や、硝酸塩、マルトデキストリン、果糖ブドウ糖液糖、グルコースその他の添加物を含む製品は売らない」
土を育てる ゲイブ・ブラウン著 NHK出版 p141
これが「標準」だそうです。
「信頼」「透明性」「まっとうな商品」
つまり、ゲイブさんが作った農作物、加工食品は
- 化学肥料
- 化学農薬
- 殺菌剤
- 牛の飼料に穀物
- 駆虫剤
- ホルモン剤
- 予防注射
- 遺伝子組み換え作物
- アミノ酸等
- 硝酸塩
- 人工合成添加物
こういうモノが、すべて「不使用」なのです。
顧客はこれを見て、私たちがしっかりした意識を持ち、彼らのことをいちばんに考えていることに気づき、そのことによって”信頼”が築かれる。
土を育てる ゲイブ・ブラウン著 NHK出版 p142
これも、消費者が知りたい情報を「全て公開」しているから。
「信頼」できる「透明性」が確保された「まっとうな商品」だからこそ、高くても消費者は喜んで買うのです。
消費者の意をくまない「日本の行政」
それなのに、日本では「逆行する動き」がありますよ。
これで「金儲け」できるのは誰でしょう。よく考えないと、健康を害するかもしれませんよ。
「取れるか」より「入ったか」
お仕事に「収益」は大切です。けれども、収益ばかり考えて「土の健康」を損なってはいけません。環境を犠牲にて、目先の利益を追いかけても、「あとで困るのは自分」なのです。
自然は収量なんて気にしない。自然が気にするのは「持ちこたえられるかどうか」。自然はただサステイナブルでありたいのだ。果たして自分は、農業をあと1年続けたいのか?それとも何十年も続けたいのか?収量ばかり気にするメンタリティはいよいよ手放すべきだと思った。
土を育てる ゲイブ・ブラウン著 NHK出版 p240」
「リジェネラティブ農業」で大切な第4の原則:土の中に「生きた根」を保つ。
これによって
- 土の中に炭素(根)を送り込み、土壌生物を養う
- 植物が出す「分泌物」が、菌根菌を養う
ですから、「どれだけ取れるか」より「土にどれだけ入ったか」が大切なんです。つまり、最初でご紹介した
「小さな変化を生み出したいなら、やり方を変えればいい。大きな変化を生み出したいなら、見方を変えなければ」
土を育てる ゲイブ・ブラウン著 NHK出版 p40
が大切なのです。
消費者も「見方を変える」のが大切
「土の6原則」は、消費者にも当てはまります。私たちも「見方を変える」ことが必要ですよ。こんな風に「応用」してみてはいかがでしょうか。
- 食べ物を加工しすぎない
- 新鮮なうちに食べる
- いろんなものを食べる
- 自然の循環に当てはまるものを食べる
- 動植物を、まんべんなく食べる
そして
- 気候風土に合った旬のモノを食べる
悪いのは「人間の考え方」
よく「動物を食べてはいけない」という人がいますけど、それは見方が違うだけ。
循環型農業には、気候風土に合った動物が必須なのです。なぜなら「もともと、多彩な動物がいたから」。それで形成された自然が、ずーっと続いて今があるのです。なくせば、土が健康を保てません。
家畜が悪いのではなく、「人間の飼い方が悪い」だけ。
「もし本当に地球環境のことを心配するなら、たとえあなた自身が肉を食べないとしても、反芻動物が草をはむことの重要性に目を向けるべきだ」。この点については、牧場主で著述家のニコレット・ハーン・ナイマンの本『牛肉は悪くない(Defending Beef)』が見事にまとめてくれている。
土を育てる ゲイブ・ブラウン著 NHK出版 p167
「効率的だから」「経費削減で」と1か所で大量に家畜を飼うから、問題になるのです。
手間を省くと、結局人が不健康に
「遺伝子組換え」もそうですが、「ゲノム編集」「新しい昆虫食」も、「土の6原則」と照らし合わせて考え直す必要があります。
ゲノム編集しなくても、従来の動植物があるのですよ。それを何故、税金を投入して「影武者」を作るのでしょうね……。それも、日本だけですよ。
この手の「夢のような新技術」は、詳細が「特許に関わるので非公開」です。
顧客はこれを見て、私たちがしっかりした意識を持ち、彼らのことをいちばんに考えていることに気づき、そのことによって”信頼”が築かれる。
土を育てる ゲイブ・ブラウン著 NHK出版 p142
顧客がこれを「見れない」、それじゃ”信頼”も築けませんよね。私たちは、そういうモノに「頑張って稼いだお金」を使っちゃダメなのです。
地産地消、旬を大切にする
トマトの旬は夏です。それなのに「トマト鍋」。
鍋は冬の食べ物ですよね。この鍋、美味しく作るためには「完熟トマト」が必要ですよ。
暑いときに食べる「アイスクリーム」。
寒い時期に体を冷やして、免疫力を低下させる商品です。この商品の開発秘話は、「提供社の都合により削除」されていますよ。どう思いますか?
消費者にも、勉強が必要
大企業は、商品を売りたいので「カンタン」「便利」「目新しいモノ」を売り出します。ただ、それに飛びついて、私たちは気候変動を招いたのですよね。それなら、消費者もコレです。
「小さな変化を生み出したいなら、やり方を変えればいい。大きな変化を生み出したいなら、見方を変えなければ」
土を育てる ゲイブ・ブラウン著 NHK出版 p40
自然本来の動きを知り、「消費者の6原則」を作り、「サステイナブルな消費」を心がけませんか?
そして後年振り返った時、初めて『これって「SDG’s」「カーボンオフセット」「4R」だったんじゃない?』と思うのではないでしょうか。
日本での実践例
今回ご紹介した本は、アメリカの著書。ちょっと実感がわきませんよね。そこで、日本人による著書を2冊ご紹介します。
「自然農法」福岡正信著 春秋社
ゲイブさんも参考にした「自然農法 わら一本の革命」
ゲイブさんは「カバークロップ」の種をトラクターで撒いていますが、福岡さんは「泥団子」にして撒いています。
この本、後半が「哲学書」になっているので……ですが、前半はとても参考になります。
「イネの多年草化栽培」小川誠 地湧の杜
毎年、田植えをする方へ。稲は「多年草」なんです!
実は「田植え」「除草」不要ですよ。
ただ、今のところ北限は「宮城県」。けれども、条件次第では可能かもしれません。ぜひお試しください!
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