世の中、やたらと「脱プラスチック」と言っているけど、いったい何が問題なの?
そう思う方も、いらっしゃいますよね。実際、レジ袋を使っても、健康に問題はありません。ただ、プラスチック問題はとても奥が深いのです。
ここでは「海洋プラスチック問題とは」「なぜ、こういう報道がされるのだろう」という疑問に本格的に答えてくれる、二冊の本をご紹介します。
これを読めば、世界の科学者が頑張って研究し続ける意味が分かりますよ!
プラスチック問題の中の「海洋プラスチック問題」
ひとくちに「プラスチック問題」といっても、実は細かく分かれています。ここでは「海洋プラスチック問題」を取り上げます。
海を漂うプラスチックの問題は、2007年ぐらいから、海を研究する科学者の間で取り上げられるようになりました。
こういう科学者が調査に入るところには、普段人間が立ち入らない場所がたくさんあります。それなのに、調査地にはプラスチックごみが山のようにあったそうです。
五年から十年に一度だけ、調査目的のために限られた人だけが上陸を許される、まさに人間活動とは無縁の島だ。そんな島の海辺の風景を、あなたならどう思い浮かべるだろうか?美しい海を臨む自然豊かな最後の楽園。そんな海辺を想像するかもしれない。
しかしこの島の浜辺にはおびただしい数のプラスチックごみが散らばっている。
海洋プラスチック汚染 「プラなし」博士、ごみを語る 中嶋亮太著 岩波書店 p1
「大変なことが起きているのでは?」と、調査が始まったのです。
プラスチックの、ココが問題
プラスチック問題は、科学的にみると、主に3つに分けられます。
分解されにくい、自然界を循環しない
プラスチックは、分解されにくい性質があります。だからこそ、医薬品、食品の包装として使われます。その性質は、使う側から見ると非常に便利です。ですが、処理する側から見ると、とても厄介です。
例えば、紙は植物から作られます。使い終わった紙を埋めたり、燃やしたりすれば、植物の栄養源になります。
しかし、プラスチックは埋めても分解されません。そして、燃やせば二酸化炭素になります。石油には戻らないのです。そのため、大気中に二酸化炭素が増え、気候危機の一因になってしまいます。
油と仲良くなる
石油から作られるプラスチックは、油のようなものと仲良くなる性質を持っています。
大豆から油を取り出す「ヘキサン抽出」も、この性質を利用しています。
プラスチックは、海中をただよう間に「油のようなもの」とくっつき、別な問題を引き起こしていますよ。この問題は、後で詳しく説明します。
添加剤を使う
「ポリプロピレン」「ポリエチレン」「ポリエステル」「PET(ポリエチレンテレフタレート)」とは、プラスチックの骨の部分。そこに、いろんな機能を持たせるために、添加剤を加えます。
- 酸化防止剤(酸素と反応してボロボロになるのを防ぐ)
- NOx黄変防止剤(ライトのプラスチック部分が黄色になるのを防ぐ)
- 触媒(化学反応を手助けしてくれる)
- 難燃剤(製品を火事から守る)
こういう添加剤には、毒性があるモノも。それが、海洋プラスチック問題をさらに難しくしています。
視点を変えると、こういう問題
物理的にみると、こんな問題も。
景観を損なう
分解されにくい、自然界を循環しない性質が「景観を損なう」という大きな問題を引き起こしています。
有名な観光地では、お金をかけてごみを除去します。しかし、そんな余裕のない所では、ごみは放置されます。
観光客で賑わうことなく放置された海岸は、写真の通りにペットボトルなどプラスチックごみに覆われています。大気汚染や水質汚染と違って、景観汚染とは耳馴染みのない言葉かもしれません。しかし、美しい島の海岸で悪目立ちする大量のプラスチックごみには、汚染という強い言葉がふさわしいと私は思うのです。
海洋プラスチック ごみ問題の真実 磯部篤彦著 DOJIN選書 p44
野生動物が食べる、からまる
海中をフワフワ、キラキラとただようプラスチック。それを、動物がエサと間違えて食べてしまいます。
これだけ胃袋に入っていれば、具合が悪かったと思います。
捨てられた漁網にからまったウミガメも。
ウミガメ以外にも、犠牲になる動物がたくさんいます。
化学物質による健康被害
先ほどご紹介した、プラスチックの「油と仲良くなる」性質。それによって、こんなことが起きると考えられています。
海中の「油のような物質」とくっつく
プラスチックが細かくなり、海の中で油のような物質と仲良くなり、魚に食べられます。
もし、油のような物質が「毒」だったら……
人間が作った化学物質の中に「DDT」「PCB’s」があります。日本でもよく使われました。
DDTは戦後、日本人が頭からかけられた白い粉です。
PCB’sは、ポリ塩化ビフェニル。燃えない油としてよく使われた物質です。カネミ油症事件を引き起こしたことで有名になりました。
これらは、人間が作った「分解されにくい」「油のような毒」です。一部地域を除き、世界中で使われなくなって50年ほどたちますが、分解されずに海中をただよっています。
そして、プラスチックと出会うと、くっついてしまいます。そのプラスチックを魚が食べて……私たちの食卓に並ぶのです。
添加剤が毒
プラスチックを作る際加える「添加剤」が問題を起こすこともあります。
例えば、ビスフェノールA。これは環境ホルモンとして有名な化学物質です。
少し前まで、感熱紙にもよく使われていました。
さらに海外では、「糖尿病の一因では?」とも言われています。
そのほかにも、臭素系難燃剤が海鳥から検出されています。
いろんな研究が進み、「プラスチックの添加剤が、生態系に複雑で深刻な影響を与えているのでは?」と心配されているのです。
まだまだ問題が出てくる可能性が……
プラスチック、添加剤、DDT、PCB’s、ビスフェノールAは、人間が開発した化学物質です。
人間が自然界に放った巨大ブーメランが、半世紀かけて私たちに返ってきていることが、だんだん分かってきました。この影響の大きさ、対策を考えるために、科学者が一生懸命研究しているのです。
使い捨ては、使わないのが一番の対策
ただ、プラスチックは飛行機、自動車や建築物にも使われています。家電製品もプラスチック製です。
けれども、そういうプラスチックは使い捨てではありません。そこを減らすより、まずは「使い捨てプラスチックを減らそう」と「脱プラスチック」対策が世界中で取られているのです。
この二冊を読むと、その過程がよく分かります。
脱プラを極められるサイト
ちなみに「海洋プラスチック汚染」の著者 中嶋亮太先生は「プラなし生活」というサイトの管理者です。
このサイトでは、脱プラの最新情報を入手することができます。特に「量り売りショップ」
良いお店を見つけた場合は、プラなし生活さんに情報提供しませんか?みんなで情報を共有して、脱プラ生活を楽しみながら盛り上げましょう!
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