スーパーの野菜売り場で、こんな表示を見ませんか?
- 有機野菜
- オーガニック
- 無農薬栽培
- 特別栽培農作物
けれども「何が、どうちがうの?」って思いませんか。
そこで、色々調べてみた結果、「表示には細かい決まりがある」という事が分かりました。その「違い」を、ココで詳しく説明しますね。
この記事を読めば、「野菜の見方」が変わるかもしれませんよ~
有機農業とは
まず、「有機農業」とは
我が国では、平成18年度に策定された「有機農業推進法※注4」において、有機農業を「化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業をいう。」と定義されています。
農林水産省HP 有機農業関連情報より(2021年6月抜粋)https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/yuuki/
つまり
- 化学合成された肥料(化学肥料)
- 化学合成された農薬
- 遺伝子組み換え作物
を使わない農業のことです。
有機農産物とは
「有機農産物」も、法律で決められていまして…
有機農産物とは、化学的に合成された肥料及び農薬の使用を避けることを基本として、土壌
農林水産省HP 有機農業関連情報より(2021年6月抜粋)https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/yuuki/attach/pdf/index-37.pdf
の性質に由来する農地の生産力を発揮させるとともに、農業生産に由来する環境への負荷をで
きる限り低減した栽培管理方法を採用したほ場において、
・周辺から使用禁止資材が飛来し又は流入しないように必要な措置を講じていること
・は種又は植付け前2年以上化学肥料や化学合成農薬を使用しないこと
・組換えDNA技術の利用や放射線照射を行わないこと
など、コーデックス委員会のガイドラインに準拠した「有機農産物の日本農林規格」の基準
に従って生産された農産物のことを指します。
つまり、有機農業(上で説明した内容)で育てられて、さらに
- 近所でまかれた化学肥料、化学農薬がかからないようにする。
- 2年以上化学合成された肥料、農薬を使わない。
- 放射線照射を行わない。
こういう、国際的な取り決めを守っている農作物を「有機農作物」と呼び、「有機JASマーク」を付けられるのです。
「有機JASマーク」とは
これが「有機JASマーク」。このマークがないものに、「オーガニック」「有機」「無農薬」という言葉は使えません。
ただ、「農薬は使っていません」は大丈夫。マークがなくても使えます。
このJAS認定。つけたら付加価値が付くのですが、わざと認定を受けない農家もいるんです。なぜなら「JAS認定を受ける、継続する経費、時間、手間が膨大だから」。
その「手間暇」を、ご紹介しますね。
認定事業者(有機野菜生産者)になるには
農作物に「有機農産物」と表示するためには、「JAS認証機関」という、農林水産大臣に登録された第三者機関に
- 出張旅費
- 基本審査料
- 認証申請費用
- 講習費用
などを支払って、畑や事務所まで来てもらい認証を受ける必要があります。その後も毎年、監査、実地検査を受けなければいけません。
JAS認証機関はたくさんあります(農林水産省がまとめてくれています。)地方自治体がJAS認証機関の場合、手数料がとても安いのですが、法人の場合は様々。高いところでは「40万円近く(初年度)」。これに、旅費などが加わります。
JAS認定機関とは
その「JAS認定機関」というのも、なるのに大変手間がかかるんですよ。
JAS認定機関になるためには、農林水産省に登録する必要があります。ココも「4年ごとに更新申請」が必要。これをしないと、資格を取り消されます。また、
- 「認定の技術的基準」への適合性が不十分
- ISO/IEC17065に基づいた運用がされていない
と判断されると「適合命令」、一定期限内に適合しないと「取り消し」。そして、このJAS認定機関に認定してもらった農家さんも、認定取り消しになるのです。
JAS認証機関、たまに取り消されていますよ~。「有機」には、こんなウラがあるんです。
JASマークの見方
下の写真の「赤い線で囲った部分」。これが「有機JASマーク」です。
マークの下、赤でつぶした部分。ここに認証機関名が入ります。どこで認証されたか、すぐわかるように認証機関名を明示する必要があるんです。
ない場合、ニセモノかもしれませんよ。ご注意ください!
「特別栽培」を理解するため「慣行レベル」を知る
「特別栽培」の野菜は、何が特別なのでしょう。
「特別栽培」は、法律で
その農産物が生産された地域の慣行レベル(各地域の慣行的に行われている節減対象農薬及び化学肥料の使用状況)に比べて、節減対象農薬の使用回数が50%以下、化学肥料の窒素成分量が50%以下、で栽培された農産物です。
農林水産省 HP 2021年6月30日参照 https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/tokusai_a.html
こう決められています。ただこの、「慣行レベル」。知っていますか?
実は、「使ってよい農薬の量」は、地方自治体によって「農作物別」に決められているんです。それが「慣行レベル」。
北海道に関しては、北海道庁で「慣行レベル」を発表しています(令和3年1月20日更新)。トマトを例に挙げると、
- 加温越冬:39回
- 促成・半促成:21回
- ハウス長期どり・夏秋どり:24回
- ハウス抑制:22回
- 促成長期:77回
- 促成:72回
- 夏秋雨よけ:46回
- 抑制加温:58回
- 抑制無加温:41回
これだけ「化学農薬」が使えるんです。(※本当はもっと細かい決まりがあります。詳しくは各都道府県のHPで確認してください。)
つまり、冬の「慣行レベル」トマトは
北海道:39回
熊本:77回
化学農薬を使っている可能性があります。
先ほどご紹介した通り、「特別栽培農産物」とは
- 節減対象農薬の使用回数が50%以下
- 化学肥料の窒素成分量が50%以下
だから、冬に化学農薬を38回使うと、
- 北海道では「慣行農産物」
- 熊本では「特別栽培農産物」
になる可能性があるのです!
おまけに、「ネオニコチノイド」のような強い農薬を使えば、散布回数を減らせます。
それでも「特別栽培農産物」と名乗れてしまうのです。
これ、想像通りですか?
特別栽培農産物は「慣行農業の農産物よりは農薬散布量、化学肥料量を減らした」だけ。都道府県をまたぐとよく分からなくなるし、弱い農薬を使っている訳でもないのです。
だからといって、都道府県の「慣行レベル」を農作物別に覚えるのは無理!ですから、本当に農薬を避けたければ、「有機」「無農薬」を選ぶのが無難なんです。
こだわると奥が深い農作物の話。買い物の時、参考にしてみてください。
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